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Journal Papers by Wataru Iwasaki

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Selected publications / Full publication list without Japanese abstracts

PubMed

112.
Kei Hiruma, Seishiro Aoki, Junya Takino, Takeshi Higa, Yuniar Devi Utami, Akito Shiina, Masanori Okamoto, Masami Nakamura, Nanami Kawamura, Yoshihiro Ohmori, Ryohei Sugita, Keitaro Tanoi, Toyozo Sato, Hideaki Oikawa, Atsushi Minami, Wataru Iwasaki, and Yusuke Saijo.
A fungal sesquiterpene biosynthesis gene cluster critical for mutualist-pathogen transition in Colletotrichum tofieldiae.
Nature Communications, 14, 5288. (2023)

  • DOI: 10.1038/s41467-023-40867-w
  • Press Release: Grad Sch Arts Sci of UTokyo (in Japanese) Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese)
  • 植物の成長には微生物がさまざまな影響を与えますが、その中でも、病気を引き起こす「寄生」と植物成長を促進する「共生」は特に対照的です。どのようなメカニズムで寄生や共生の違いが生まれるのかを理解することができれば、植物に悪影響をもたらす因子の活性だけを抑える防除法開発などの応用にもつながることが期待されます。本研究では、糸状菌Colletotrichum tofieldiaeの同種に属する類似した菌株同士が、同じ植物に対して寄生性と共生性という対照的な性質を示すことを発見しました。そして、比較トランスクリプトーム解析や分子進化解析によって、二次代謝物生合成遺伝子が寄生と共生の違いを生み出す鍵であることを解明しました。

111.
Joel H. Nitta, Shawn W. Laffan, Brent D. Mishler, and Wataru Iwasaki.
canaper: Categorical analysis of neo- and paleo-endemism in R.
Ecography, 2023, e06638. (2023)

  • DOI: 10.1111/ecog.06638
  • Banner canaper github
  • 生態学において「生物多様性」は基本的で重要な概念ですが、実は、生物多様性を定量することは簡単ではありません。その最も本質的な理由の一つが、全ての生物種は独立ではなく、多様な進化的関係性を持つことです。例えば各地の生態系に同じ数の生物種がいたとして、その生態学的な意味は、それらの生物種群の進化的背景が異なれば大きく異なるため、「空間系統学」的な分析が必要になります。本研究では、進化的関係を考慮して生物多様性の定量化を行う手法であるCANAPE(Categorical analysis of neo-and paleo-endemism)を、高速かつ簡単に実行するRパッケージcanaperを開発しました。

110.
Yibang Wang, Hui Zhang, Weiwei Xian, and Wataru Iwasaki.
Chromosome genome assembly and annotation of the spiny red gurnard (Chelidonichthys spinosus).
Scientific Data, 10, 443. (2023)

  • DOI: 10.1038/s41597-023-02357-y / PubMed: 37438353
  • 東アジアに分布し個性的な見た目を持つ魚であるホウボウChelidonichthys spinosusは、高級魚としても知られており、その資源量の減少が危ぶまれています。そのために、環境中での繁殖・交配の様子を調べるための集団ゲノミクス解析やゲノム進化解析など、様々な解析の基盤となる高精度なホウボウのゲノム配列が必要とされていました。本研究では、ハイブリッドシーケンシングにより、ホウボウの高品質な625Mbのゲノム配列を決定しました。さらにHi-C技術を用いて24の擬似染色体の再構築を行い、25,358個のタンパク質コード遺伝子を予測しました。

109.
Chunlai Tam and Wataru Iwasaki.
AlphaCutter: Efficient removal of non-globular regions from predicted protein structures.
Proteomics, 23, 2300176. (2023)

  • DOI: 10.1002/pmic.202300176 / PubMed: 37309722
  • Banner AlphaCutter github
  • AlphaFoldに代表されるタンパク質構造予測手法の進歩により、膨大な数の高品質なタンパク質構造予測データが利用可能になっています。しかし、これらの予測構造の多くは不安定な非折りたたみ領域を含んでおり、既存の構造解析手法の多くをそのまま適用することができないという問題を抱えていました。本研究では、一般に使われるpLDDTスコアで検出できない領域も含め、タンパク質構造予測データから非折りたたみ領域を高速・効率的に除去するためのツールAlphaCutterを開発しました。本論文では実際に、AlphaCutterによりエネルギースコアとタンパク質配列設計の成功率が改善することも確認しています。

108.
Tomoyuki Mikami, Takafumi Ikeda, Yusuke Muramiya, Tatsuya Hirasawa, and Wataru Iwasaki.
Three-dimensional anatomy of the Tully monster casts doubt on its presumed vertebrate affinities.
Palaeontology, 66, e12646. (2023)

  • DOI: 10.1111/pala.12646
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese) Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese) UTokyo (in English)
  • Youtube video: 【謎の化石】3億年前の怪物、タリーモンスターの正体にせまる
  • Spotify podcast: A fossil mystery of Tully monster
  • Banner Featured in Forbes, Scientific American, etc.
  • タリーモンスターTullimonstrum gregariumは、アメリカ・イリノイ州の石炭紀の地層から産出するメゾンクリーク生物群のみに見られる奇妙な姿の古生物(動物)です。近年、タリーモンスターは実は脊椎動物であるという驚くべき説が提唱され、注目と論争を集めていました。今回、こうした古生物学分野における重要なテーマにデータサイエンスの側面から迫るべく、3DレーザースキャナーとX線マイクロCTにより、150点以上の化石3D形状データを取得し、形態学的特徴を詳細に調べました。その結果、タリーモンスターはやはり脊椎動物ではない(脊椎動物以外の脊索動物かなんらかの旧口動物である)ことが示唆されました。

107. (Book chapter, review in Japanese)
西村祐貴,綿野桂人,岩崎渉.
機械学習によるマイクロバイオームと機能未知遺伝子の解析 〜メタゲノム・対偶遺伝学・近傍遺伝子解析
清水秀幸編『実験医学別冊 Pythonで実践 生命科学データの機械学習』,387-422. (2023)

  • Image Publisher / Amazon.co.jp
  • マイクロバイオーム(微生物叢)から多種多様な微生物種が混ざり合ったメタゲノム情報を取得し、さらに、そこから未培養微生物の遺伝子やゲノムに関する情報を解析するための手法を実践的なPythonコード例を通して解説しています。特に、微生物の多様性のほとんどの部分は研究が進んでいないいわゆる微生物ダークマターですが、そうした微生物の遺伝子の多くが機能未知であるという点に注目し、機能未知遺伝子の機能推定法(対偶遺伝学解析、近傍遺伝子解析)を詳しく紹介しています。

106.
Tao Zhu, Yukuto Sato, Tetsuya Sado, Masaki Miya, and Wataru Iwasaki.
MitoFish, MitoAnnotator, and MiFish Pipeline: Updates in ten years.
Molecular Biology and Evolution, 43, msad035. (2023)

  • DOI: 10.1093/molbev/msad035 / PubMed: 36857197
  • Press Release: Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese) AORI of UTokyo (in Japanese)
  • Banner MitoFish Suite Website
  • 私たちが開発してきた魚類のミトコンドリアDNAデータプラットフォーム「MitoFish Suite」は、現在、約3,500魚種のミトコンドリアゲノムデータ、約10,000種の環境DNAデータを有しており、魚種の遺伝的多様性の推定や環境DNAを解析するための情報源として世界のデファクトスタンダードの地位を確立してきました。今回、これまでよりも高速で正確な解析機能、強化された分析機能や改善されたインターフェースを実装し、機能強化を行いました。MitoFish Suiteは、今後も魚類の分布調査や資源保全、希少種・新種の発見や保護など、生物資源の持続的発展に関連する幅広い研究分野で活用されると期待されます。

105.
Naoki Konno and Wataru Iwasaki.
Machine learning enables prediction of metabolic system evolution in bacteria.
Science Advances, 9, eadc9130. (2023)

  • DOI: 10.1126/sciadv.adc9130 / PubMed: 36630500
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese) Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese) Grad Sch Sci of UTokyo (in English)
  • Banner Evodictor github
  • 多数の遺伝子の機能が組み合わさった複雑なシステムである生命は、過去にさまざまな遺伝子を獲得・欠失することで進化してきました。では、生命システムの「未来の進化」を予測することはできるのでしょうか?本研究では、ゲノム進化過程を数理モデルを用いて推定・再構築し、さらに、その大規模なデータを機械学習することで、生命システムの未来の進化を予測する計算手法Evodictorを開発しました。本成果は、生命システムの進化の背後に普遍的なパターンがあることを示すとともに、生命システムの設計原理の理解や、薬剤耐性遺伝子を獲得しそうな病原菌種の予測、有用微生物の育種などに繋がることが期待されます。

104.
Kazumori Mise and Wataru Iwasaki.
Unexpected absence of ribosomal protein genes from metagenome-assembled genomes.
ISME Communications, 2, 118. (2022)

  • DOI: 10.1038/s43705-022-00204-6
  • ショットガンシーケンスから環境微生物のゲノムを復元するMAG(メタゲノムアセンブルゲノム)解析が一般的になり、未培養微生物の進化や生理・生態に関する研究が大きく進んでいます。一方でMAGにはまだ問題点も多く、例えば、反復配列や外来配列はMAGから欠落しやすいことが良く知られています。本研究では、反復配列でも外来配列でもない「リボソームタンパク質遺伝子」も、予想外にMAGから欠落しやすいことを明らかにしました。そして、リボソームタンパク質遺伝子におけるコドン使用頻度の偏りによるビニングの誤りがその原因であり、これが微生物の生存戦略を反映していることを明らかにしました。

103.
Nanako Kanno, Shingo Kato, Moriya Ohkuma, Motomu Matsui, Wataru Iwasaki, and Shinsuke Shigeto.
Nondestructive microbial discrimination using single-cell Raman spectra and random forest machine learning algorithm.
STAR Protocols, 3, 101812. (2022)

  • DOI: 10.1016/j.xpro.2022.101812 / PubMed: 36386892
  • 本論文は、Kanno et al., iScience, 24, 102975. (2021)で用いた、一細胞ラマン分光法による原核生物の種分類手法についてのプロトコル論文です。本プロトコルにより、非破壊的にスペクトルデータを取得し、機械学習手法であるランダムフォレストによって分析、視覚化することが可能になります。

102. (Book chapter, review)
Takao K Suzuki, Motomu Matsui, Sira Sriswasdi, and Wataru Iwasaki.
Lifestyle evolution analysis by binary-state speciation and extinction (BiSSE) model.
Methods in Molecular Biology, 2569, 327-342. (2022)

  • DOI: 10.1007/978-1-0716-2691-7_16 / PubMed: 36083456
  • Methods in Molecular Biologyシリーズ『Environmental Microbial Evolution - Methods and Protocols』(Haiwei Luo/編)収録(pp. 327-342)。系統比較法(Phylogenetic Comparative Method)は、進化数理モデルと統計学とを組み合わせることで、生物の形質の進化ダイナミクスを推測する強力な手法であり、特にこれまでマクロ生物の研究に用いられてきました。本稿では、特に2状態種分化絶滅モデル(BiSSEモデル)の理論をわかりやすく説明するとともに解析を実行するためのRコマンドを紹介し、さらに、豊富なゲノム・形質データが公開されつつある微生物の形質進化解析への適用について実例を交えて紹介しています。

101.
Joel H. Nitta, Eric Schuettpelz, Santiago Ramírez-Barahona, and Wataru Iwasaki.
An open and continuously updated fern tree of life.
Frontiers in Plant Science, 13, 909768. (2022)

  • DOI: 10.3389/fpls.2022.909768 / PubMed: 36092417
  • Banner Fern Tree of Life Website
  • 完全な進化系統樹を再構築することは、進化学における究極の目標の一つです。しかし、最新のデータに基づいた完成度の高い系統樹を再構築するためには、異なるDNA領域に由来するデータを適切に結合し、誤りを適切に修正し、種名のゆらぎを考慮するなどの処理を行なった上で、毎日のようにデータベースに新たに登録されるDNA配列データを自動的に統合することが必要であり、これは実際にはかなり困難で面倒な作業です。本研究では、約12,000種を含むシダ植物を対象として、自動的に網羅性と完成度の高い系統樹(Fern Tree of Life)を再構築するためのパイプラインを開発しました。FTOLはシダ植物の進化学・生態学・分類学などに広く貢献することが期待されるほか、科や上位の分類群について、その推定年代が以前の研究よりもかなり古いことも明らかにしました。

100.
Arnon Plianchaisuk, Kazuya Kusama, Kiyoko Kato, Sira Sriswasdi, Kazuhiro Tamura, and Wataru Iwasaki.
Origination of LTR retroelement-derived NYNRIN coincides with therian placental emergence.
Molecular Biology and Evolution, 39, msac176. (2022)

  • DOI: 10.1093/molbev/msac176 / PubMed: 35959649
  • 生物進化の過程では重要な性質が突然獲得されることがあり、例えば哺乳類の祖先が胎盤を獲得したことは、私たちの存在を可能にした最も大きな"革命"の一つと言えます。胎盤の進化には、ウイルスに由来するDNA配列である「レトロエレメント」が寄与したことがこれまで知られてきました。本研究では、大規模な哺乳類ゲノム進化解析とトランスクリプトーム進化解析を行い、胎盤の獲得に寄与したと考えられるTy3/Gypsy LTRレトロエレメント由来遺伝子としてNYNRINを新たに同定しました。さらにin vitro実験と機能エンリッチメント解析により、実際にNYNRINが栄養膜細胞への浸潤を促進すること、これにユビキチン・プロテアソーム系が関与している可能性を示しました。私たちの進化には、私たちのゲノムには元々無かった、ウイルスに由来するDNA配列が本質的な役割を果たした可能性があります。

99. (Review in Japanese)
山内駿,岩崎渉
de novo遺伝子誕生学〜「遺伝子とは何か?」を改めて問う鍵として
実験医学40,1835-1841.(2022)

  • 実験医学増刊『セントラルドグマの新常識〜転写・翻訳の驚きの新機構と再定義されるDNA・RNA・タンパク質の世界』(田口英樹・小林武彦・稲田利文/編)収録(pp. 17-23)。新たな機能遺伝子が進化の過程でどのように獲得されるかを理解することは、複雑な生物システムがどのように形作られるか、変化する環境に生物がどのように巧みに適応するか、生物の機能がどのように多彩に拡張されるかを理解する上で必須です。新規機能遺伝子の獲得は、これまで、既存遺伝子の重複と変異によって起こると考えられてきましたが、近年のゲノム系統層序学(genomic phylostratigraphy)を中心としたゲノム進化学の進展や、RNA-SeqやRibo-Seqなどのハイスループット技術の発展を背景に、新たな遺伝子が前身となる遺伝子の存在なしに生じること(de novo遺伝子誕生)が明らかになってきました。本稿では、我々の研究を交えつつこの研究領域を展望しています。
  • Publisher / Amazon.co.jp

98.
Tsukasa Fukunaga and Wataru Iwasaki.
Mirage 2.0: fast and memory-efficient reconstruction of gene-content evolution considering heterogeneous evolutionary patterns among gene families.
Bioinformatics, 38, 4039–4041. (2022)

  • DOI: 10.1093/bioinformatics/btac433 / PubMed: 35771653
  • Banner Mirage github
  • 本論文では、遺伝子ファミリーごとの遺伝子の獲得や欠失の速度の多様性を考慮したゲノム進化解析手法のアップデートであるMirage 2.0について報告しています。新たに開発したDeterministic Pattern Mixtureモデルを進化数理モデルに導入することで、大幅な高速化とメモリ効率の向上を実現し、数千ゲノムを用いたゲノム進化解析を可能としました。

97.
Taiki Adachi, Yasuhiko Naito, Patrick W. Robinson, Daniel P. Costa, Luis A. Hückstädt, Rachel R. Holser, Wataru Iwasaki, and Akinori Takahashi.
Whiskers as hydrodynamic prey sensors in foraging seals.
Proc Natl Acad Sci U S A, 119, e2119502119. (2022)

  • DOI: 10.1073/pnas.2119502119 / PubMed: 35696561
  • Press Release: Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese) Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • Banner Featured in Science, Scientific American, The Guardian, Jiji Press, TV Asahi, and Nippon TV.
  • 私達ヒトを含む一部を除き、ほとんどの哺乳類は動かすことのできる「ヒゲ」を顔に持っています。しかしながら実は、自然界で動物たちがヒゲをどのように動かし、利用しているかはよくわかっていません。本研究では、光源付きの小型のビデオカメラを開発し、キタゾウアザラシの顔に装着することで、深海のような極限的な環境においてゾウアザラシがどのようにヒゲを使っているかを調査しました。その結果、哺乳類のヒゲが、暗闇において水の動きを感知して動く獲物を捕らえるために重要な役割を果たしていることを初めて示しました。これは、クジラなどが使うバイオソナーとは異なる、暗闇に対する哺乳類のもう一つの適応の形だとも言えます。

96.
Asano Ishikawa, Shun Yamanouchi, Wataru Iwasaki, and Jun Kitano.
Convergent copy number increase of genes associated with freshwater colonization in fishes.
Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 377, 20200509. (2022)

  • DOI: 10.1098/rstb.2020.0509 / PubMed: 35634928
  • 生物進化の過程では、一塩基置換などのゲノム配列の小規模な変異のみならず、遺伝子のコピー数変化(CNV)が重要な役割を果たすことが知られています。ある環境に適応する上でどのような遺伝子のCNVが特に重要か、また、同じCNVが繰り返し見られるかどうかを体系的に調べるため、本研究ではゲノム進化解析により、魚類の淡水進出の進化においてどのようなCNVが繰り返し観察されるかを俯瞰的に調査しました。その結果、淡水化に伴いコピー数が増加する23の遺伝子を同定し、特に脂肪酸代謝、免疫機能、甲状腺ホルモン代謝に関わる遺伝子のコピー数増加がマクロ進化・ミクロ進化の双方に共通して重要であることを明らかにしました。

95.
Yannis Nevers, Tamsin E. M. Jones, Dushyanth Jyothi, Bethan Yates, Meritxell Ferret, Laura Portell-Silva, Laia Codo, Salvatore Cosentino, Marina Marcet-Houben, Anna Vlasova, Laetitia Poidevin, Arnaud Kress, Mark Hickman, Emma Persson, Ivana Piližota, Cristina Guijarro-Clarke, the OpenEBench team, the Quest for Orthologs Consortium, Wataru Iwasaki, Odile Lecompte, Erik Sonnhammer, David S. Roos, Toni Gabaldón, David Thybert, Paul D. Thomas, Yanhui Hu, David M Emms, Elspeth Bruford, Salvador Capella-Gutierrez, Maria J Martin, Christophe Dessimoz, and Adrian Altenhoff.
The Quest for Orthologs orthology benchmark service in 2022.
Nucleic Acids Research, 50, W623–W632. (2022)

  • DOI:10.1093/nar/gkac330 / PubMed: 35552456
  • Banner Quest for Orthologs Website
  • Banner Orthology Benchmarking Service
  • Orthology Benchmark Serviceは、Quest for Orthologsコンソーシアムによって開発・維持されているオルソログ遺伝子推定の精度評価のためのゴールドスタンダードです。比較ゲノム・ゲノム進化研究をさらに発展させる上では、オルソログ遺伝子推定技術をさらに改良することが不可欠であり、私たちはOpenEBenchプラットフォーム等を通じて本サービスの改善やデータ更新を続けています。今回の更新では、Vertebrate Gene Nomenclature Committeeによる新しいベンチマークを追加し、メタ解析を行いました。

94.
Joel H. Nitta, Brent D. Mishler, Wataru Iwasaki, and Atsushi Ebihara.
Spatial phylogenetics of Japanese ferns: Patterns, processes, and implications for conservation.
American Journal of Botany, 109, 727-745. (2022)

  • DOI: 10.1002/ajb2.1848 / PubMed: 35435239
  • 本研究では、日本のシダ植物についての大規模かつ包括的な系統地理学的解析を行いました。日本を20km四方のグリッドセル1,239個に分け、30万件以上の標本記録、672分類群を含むデータを作成し、分類学的・系統的・機能的多様性を解析し、環境因子と繁殖様式がどのように生物多様性指標に影響するかをモデルを用いて解析しました。その結果、日本のシダ植物分布は分類学的・系統的に3または4つの領域に分けられることや、気温と無配偶生殖が生物多様性の駆動力であること、特に多様性の高い地域でシカの草食による脅威が大きいことなどが明らかになりました。

93. (Review in Japanese)
岩崎渉
機能未知遺伝子の機能を推測するバイオインフォマティクス:AlphaFoldから遺伝子誕生学へ
日本微生物生態学会誌, 37, 3-13. (2022)

  • DOI: 10.20709/jsmeja.37.1_3
  • 現代生物学における最大のボトルネックの一つであり、さらに、医学・薬学・農学等への応用の観点からも巨大なポテンシャルを秘めているフィールドが、多様な微生物ゲノムにコードされた機能未知遺伝子の機能解析です。本論文では、一般的な研究手法ではアプローチが難しいこのフィールドについて、特にバイオインフォマティクスの観点からどういった研究戦略が可能なのか、包括的に解説しました。また、その先に切り開かれるべき未来の研究領域としての「遺伝子誕生学」についても展望しています。

92.
Tsukasa Fukunaga and Wataru Iwasaki.
Inverse Potts model improves accuracy of phylogenetic profiling.
Bioinformatics, 38, 1794-1800. (2022)

  • DOI: 10.1093/bioinformatics/btac034 / PubMed: 35060594
  • Banner Inverse Potts Model github
  • 系統プロファイリング(ファイロジェネティックプロファイリング)法は、機能未知遺伝子の機能を明らかにするための強力な比較ゲノム解析手法です。しかし、従来の系統プロファイリング法には、系統的制約(系統シグナル)と擬似相関という2つの推定バイアスが入り込む余地が存在しました。本研究では、前者に対処するために進化系統樹と進化モデルを用いた祖先状態推定法を、また、後者に対処するために大域的な相互作用解析を行う生成モデルである逆イジング法のうち逆ポッツモデルを、それぞれ系統プロファイリング法に組み入れることで予測性能が向上することを示しました。

91.
Naoki Konno, Yusuke Kijima, Keito Watano, Soh Ishiguro, Keiichiro Ono, Mamoru Tanaka, Hideto Mori, Nanami Masuyama, Dexter Pratt, Trey Ideker, Wataru Iwasaki, and Nozomu Yachie.
Deep distributed computing to reconstruct extremely large lineage trees.
Nature Biotechnology, 40, 566-575. (2022)

  • DOI: 10.1038/s41587-021-01111-2 / PubMed: 34992246
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • Youtube video: 研究室の扉「生命の進化・発生の系譜を高速に求める」
  • Cover Image Selected as the cover of the April 2022 issue of Natute Biotechnology.
  • ゲノム編集技術の進展により、近年、個体内での膨大な細胞分裂の系譜をDNA配列プールデータとして得ることが可能になりました。細胞系譜を推定するためのバイオインフォマティクス解析としては進化系統樹推定手法を応用することが考えられますが、この場合、入力データ量が極めて膨大になるという問題点があります。本研究では、大量のDNA配列から高速に巨大な系統樹を推定する手法FRACTALを開発しました。本手法は、さまざまな系統樹推定ソフトウェアをベースに、それらが取り扱えるDNA配列数を飛躍的に拡張させ、2億以上の配列から成る巨大な系統樹の推定に利用できます。

90.
Tsukasa Fukunaga and Wataru Iwasaki.
Mirage: Estimation of ancestral gene-copy numbers by considering different evolutionary patterns among gene families.
Bioinformatics Advances, 1, vbab014. (2021)

  • DOI: 10.1093/bioadv/vbab014
  • Banner Mirage github
  • ゲノム進化解析は、生命システムがどのように形作られてきたかを解明する上で重要な手法です。ゲノム進化解析のためにこれまで様々な数理解析手法が開発されてきましたが、それらの手法は遺伝子ファミリーごとに遺伝子の獲得や欠失の速度が大きく異なるという、ゲノム進化の本質的な特徴に対応していませんでした。本研究では、異なる遺伝子ファミリーが異なる遺伝子獲得・欠失率を持つことを可能にするMirage (MIxtuRe model for Ancestral Genome Estimation)法を開発しました。Mirageは、遺伝子ファミリー間の不均一な遺伝子コピー数の進化を定式化するために、離散化Γモデル、PDFモデル、PMモデルの3つの数理モデルと組み合わせることが可能です。

89.
Masako Nishikawa, Hiroshi Kanno, Yuqi Zhou, Ting-Hui Xiao, Takuma Suzuki, Yuma Ibayashi, Jeffrey Harmon, Shigekazu Takizawa, Kotaro Hiramatsu, Nao Nitta, Risako Kameyama, Walker Peterson, Jun Takiguchi, Mohammad Shifat-E-Rabbi, Yan Zhuang, Xuwang Yin, Abu Hasnat Mohammad Rubaiyat, Yunjie Deng, Hongqian Zhang, Shigeki Miyata, Gustavo K. Rohde, Wataru Iwasaki, Yutaka Yatomi, and Keisuke Goda.
Massive image-based single-cell profiling reveals high levels of circulating platelet aggregates in patients with COVID-19.
Nature Communications, 12, 7135. (2021)

  • DOI: 10.1038/s41467-021-27378-2 / PubMed: 34887400
  • Banner Featured in NHK and Nikkei Newspaper.
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度や多臓器不全の発症には、微小血管血栓症が関連することが明らかになっていますが、その詳細な研究は進んでいませんでした。本研究では、東京大学病院に入院したCOVID-19患者110名から採取した血液を対象に、マイクロ流体チップ上で高速流体イメージングを行うことで、全患者の約9割において循環血小板凝集塊が過剰に存在することを明らかにしました。また、循環血小板凝集塊の出現頻度とCOVID-19患者の重症度、死亡率、呼吸状態、血管内皮機能障害の程度に強い相関があることを発見しました。

88.
Gokalp Yildirir, Jana Sperschneider, Mathu Malar C., Eric C. H. Chen, Wataru Iwasaki, Calvin Cornell, and Nicolas Corradi.
Long reads and Hi-C sequencing illuminate the two compartment genome of the model arbuscular mycorrhizal symbiont Rhizophagus irregularis.
New Phytologist, 233, 1097-1107. (2022)

  • DOI: 10.1111/nph.17842 / PubMed: 34747029
  • 近年、核コンパートメントやTopologically Associating Domains(TAD)などのゲノム3次元構造がゲノム機能の調節に関わることが、Hi-C解析などによって明らかになってきています。本研究では、NanoporeシーケンスとHi-C解析を組み合わせることで、植物の代表的な共生生物であるアーバスキュラー菌根菌の5つの株について、33染色体からなるゲノム構造やその3次元構造を詳細に解明し、染色体再編成、遺伝子発現、エピゲノム状態との関連性を明らかにしました。特に、ヘテロクロマチン的な特徴を持つBコンパートメントに、植物共生に伴って発現が上昇する遺伝子や分泌タンパク質をコードする遺伝子が多く存在しており、植物共生にゲノム3次元構造の変化が関わる可能性が示唆されました。

87.
Nanako Kanno, Shingo Kato, Moriya Ohkuma, Motomu Matsui, Wataru Iwasaki, and Shinsuke Shigeto.
Machine learning-assisted single-cell Raman fingerprinting for in situ and nondestructive classification of prokaryotes.
iScience, 24, 102975. (2021)

  • DOI: 10.1016/j.isci.2021.102975 / PubMed: 34485857
  • 環境中に存在する微生物を研究する上で、非破壊的にかつ単一細胞レベルで微生物の種を正確に分類するための手法が必要とされています。本研究では、一細胞ラマン分光法によって非破壊的にスペクトルデータを取得し、性能の良い機械学習手法であるランダムフォレストを用いることで、細菌と古細菌を含む原核生物の種を100%に近い精度で分類できることを示しました。また、各波数(波長)の特徴量分析により、カロテノイドの存在と膜脂質の構造が重要な特徴となっていることも示しました。一細胞ラマン分光法は、いわゆる微生物ダークマターの研究において有力なツールとなることが期待されます。

86.
Yuka W Iwasaki, Sira Sriswasdi, Yasuha Kinugasa, Jun Adachi, Yasunori Horikoshi, Aoi Shibuya, Wataru Iwasaki, Satoshi Tashiro, Takeshi Tomonaga, and Haruhiko Siomi.
Piwi–piRNA complexes induce stepwise changes in nuclear architecture at target loci.
EMBO Journal, 40, e108345. (2021)

  • DOI: 10.15252/embj.2021108345 / PubMed: 34337769
  • PIWI-interacting RNA(piRNA)は生殖細胞で発現するsmall RNAであり、ゲノム上でトランスポゾンが有害な転移を起こすことを抑制する重要な役割を果たしています。これまで、このpiRNAによる抑制には、配列レベルでの直接的な相互作用だけではなく、ヘテロクロマチンの抑制やヒストン修飾などのエピジェネティックな作用が関わることが明らかにされてきました。本研究では、ChEP解析、DamID-seq、Hi-C解析により、piRNAによる抑制にさらに核ラミナとの相互作用や高次ゲノム構造の変化が関わっていることを明らかにし、配列レベルからゲノム構造レベルにわたるpiRNAの機能の全体的な機序を解明しました。

85. (Review)
Benjamin Linard, Ingo Ebersberger, Shawn E. McGlynn, Natasha Glover, Tomohiro Mochizuki, Mateus Patricio, Odile Lecompte, Yannis Nevers, QFO Consortium, Paul D. Thomas, Toni Gabaldón, Erik Sonnhammer, Christophe Dessimoz, and Ikuo Uchiyama.
Ten years of collaborative progress in the Quest for Orthologs.
Molecular Biology and Evolution, 38, 3033-3045. (2021)

  • DOI: 10.1093/molbev/msab098 / PubMed: 33822172
  • Banner Quest for Orthologs Website
  • Banner Orthology Benchmarking Service
  • Quest for Orthologsコンソーシアムは、遺伝子間の進化学的関係の情報解析技術、特にオルソログ解析技術の開発に取り組む世界各国のバイオインフォマティクス研究者からなるコミュニティです。本総説論文では、2019年に愛知県岡崎市で開催された第6回QfOミーティングにおいて議論・発表された内容を中心に、標準化・スケーラビリティの向上・系統プロファイリング解析・ネットワーク解析・対象生物ドメインの拡大などに関わる、本分野の最新の進展状況を紹介しています。

84.
Tomoyuki Mikami and Wataru Iwasaki.
The flipping t‐ratio test: phylogenetically informed assessment of the Pareto theory for phenotypic evolution.
Methods in Ecology and Evolution, 12, 696-706. (2021)

  • DOI: 10.1111/2041-210X.13553
  • Banner Flipping t-ratio Test github
  • 「あちらを立てればこちらが立たず」という言葉があるように、生物は何にでも進化できるわけではありません。生物進化の可能性や限界を説明する一般法則として、近年、経済学のアプローチを生物学に応用した「パレート理論」が注目され、多くの論文が発表されています。本研究において私たちは、それらの研究が検証に用いてきた「t‐ratio test」に深刻な理論的欠陥があることを明らかにし、先行研究の結論の多くに誤りがある可能性が高いことを指摘しました。そして、この欠陥を修正した統計的検定手法「flipping t‐ratio test」を開発し、パレート理論による生命進化可能性研究の理論的基盤を整備しました。

83.
Shotaro Hirase, Ayumi Tezuka, Atsushi J. Nagano, Mana Sato, Sho Hosoya, Kiyoshi Kikuchi, and Wataru Iwasaki.
Integrative genomic phylogeography reveals signs of mitonuclear incompatibility in a natural hybrid goby population.
Evolution, 75, 176-194. (2021)

  • DOI: 10.1111/evo.14120 / PubMed: 33165944
  • Press Release: Grad Sch Agr Life Sci of UTokyo (in Japanese) / Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • ある生物種において遺伝的に異なる複数の集団があり、その間の交雑によって新たなゲノムの組み合わせが生じた場合、遺伝子間の協調が妨げられ、交雑個体の生存能力や妊性が低下することがあります。この「ゲノム不適合」は、新たな遺伝子の組み合わせを持つ生物の誕生を抑制するなど、ゲノム進化を考える上で重要な要素です。本研究では、ハゼ科の魚であるアゴハゼの2つの種内系統の交雑をモデルとして、ミトコンドリアゲノムと核ゲノムのそれぞれに存在しているミトコンドリアにおけるエネルギー生産活動に関与する遺伝子の不適合(mitonuclear incompatibility)が交雑によって実際に生じている可能性が高いことをde novo genome sequencing、RNA-Seq、RAD‐Seq, mitogenome sequencing, small RNA-Seqを用いた「統合的ゲノム系統地理学」によって明らかにしました。

82. (Book chapter, review in Japanese)
岩崎渉.
環境DNA解析とバイオインフォマティクス:いま必要なこと、今後に向けて考えるべきこと
一般社団法人環境DNA学会企画、土居秀幸・近藤倫生編『環境DNA―生態系の真の姿を読み解く―』,225-229. (2021)

  • Image Publisher / Amazon.co.jp
  • 本書は、近年急速に発展している、環境中に存在するDNAを調べることで生物の分布情報を得る「環境DNA技術」と呼ばれる分析手法に関する入門書です。本チャプターでは、バイオインフォマティクスを専門とする立場から、環境DNA解析とバイオインフォマティクスの関係性をテーマに、研究手法上の直接的な関係性や研究分野上のより間接的な関係性に注目して、いま必要なこと、今後に向けて考えるべきことについて述べています。

81.
Kazumori Mise and Wataru Iwasaki.
Environmental atlas of prokaryotes enables powerful and intuitive habitat-based analysis of community structures.
iScience, 23, 101624. (2020)

  • DOI: 10.1016/j.isci.2020.101624 / PubMed: 33117966
  • Banner ProkAtlas Website
  • メタゲノム解析や16S rRNAアンプリコンシーケンス解析によって、あらゆる環境の微生物群集組成データが取得されるようになりました。しかし、そうしたデータからはどのような分類群に属する微生物が存在するかはわかっても、では微生物生態系に何が起こっているかを理解することは難しいという本質的な問題が現在でも残っています。本研究では、微生物群集組成データを生息環境組成として表現することでそうした解釈を行うhabitat-based analysisを多角的に検討し、その有効性を様々なデータセットを用いて検証しました。またそのために、16S rRNA遺伝子配列と微生物の生息環境をPCRバイアスフリーかつ網羅的に結びつけるProkAtlasデータベース・パイプラインを開発しました。

80.
Kaori Motoki, Tomo-o Watsuji, Yoshihiro Takaki, Ken Takai, and Wataru Iwasaki.
Metatranscriptomics by in situ RNA stabilization directly and comprehensively revealed episymbiotic microbial communities of deep-sea squat lobsters.
mSystems, 5, e00551-20. (2020)

  • DOI: 10.1128/mSystems.00551-20 / PubMed: 33024051
  • Recommended at Faculty Opinions.
  • 太陽光が届かない深海の生態系は、地上とは全く異なる謎めいたものです。例えば、沖縄周辺の深海熱水噴出孔に生息する無脊椎動物ゴエモンコシオリエビは、その体表に一次生産を行う化学合成微生物群集を纏うことで生きています。その特異な微生物生態系の全体像を詳細に明らかにする上では、微生物群集レベルで網羅的に遺伝子発現解析を行うメタトランスクリプトーム解析が有効ですが、深海研究ではサンプルの取得にも長時間を要するため不安定なRNAを分析することは簡単ではありません。本研究では深海でRNA安定化を行うことでそのメタトランスクリプトーム解析を行い、硫黄・窒素代謝など、ゴエモンコシオリエビの外部共生微生物叢が持つ機能の遺伝子基盤の全貌を明らかにしました。また、大まかに3つのグループからなる微生物叢が、実際にはかなり複雑な構成を持ち、しかも不思議なことに長期間にわたって維持されていることも見出しました。

79.
Hui Jia, Yibang Wang, Susumu Yoshizawa, Wataru Iwasaki, Yuquan Li, Weiwei Xian, and Hui Zhang. Seasonal variation and assessment of fish resources in the Yangtze Estuary based on environmental DNA.
Water, 12, 2874. (2020)

  • DOI: 10.3390/w12102874
  • 長江(揚子江)河口は様々な水産種の繁殖に重要な水域ですが、近年、その水産資源が多様性・量ともに減少を続けていることが伝統的な生態系調査によって示唆されています。本研究では、2018年に行った研究に引き続いて、2019年に取得した長江河口の水サンプルに環境DNA解析を適用し、魚類相の季節性解析を行いました。その結果、2018年の研究と同様に環境DNA解析の結果に季節性変動が見られるとともに、2018年と2019年の間でも差異が見られることが明らかになりました。

78.
Yu Maeda, Kazumori Mise, Wataru Iwasaki, Akira Watanabe, Susumu Asakawa, Rasit Asiloglu, and Jun Murase.
Invention of artificial rice field soil: A tool to study the effect of soil components on the activity and community of microorganisms involved in anaerobic organic matter decomposition.
Microbes and Environments, 35, ME20093. (2020)

  • DOI: 10.1264/jsme2.ME20093 / PubMed: 32963205
  • Selected as 2019 Microbes and Environments論文賞選考委員会選出優秀論文
  • 複雑なシステムの研究を行う上では、そのシステムを構成する個々の要素が果たしている役割を切り分けて解析できることが鍵を握ります。しかし、生態系研究ではいまだにそうしたアプローチを使える場面は多くありません。本研究では、土壌微生物生態系研究においてそうしたアプローチを可能にする系として、嫌気的メタン生成という水田土壌の性質を再現した人工土壌を開発しました。さらに、この人工土壌を用いることで、土壌微生物を加えるタイミングが系の性質にとって重要であることや、土壌微生物叢に機能的な冗長性があることを示しました。

77. (Commentary)
Toshifumi Minamoto, Masaki Miya, Tetsuya Sado, Satoquo Seino, Hideyuki Doi, Michio Kondoh, Keigo Nakamura, Teruhiko Takahara, Satoshi Yamamoto, Hiroki Yamanaka, Hitoshi Araki, Wataru Iwasaki, Akihide Kasai, Reiji Masuda, and Kimiko Uchii.
An illustrated manual for environmental DNA research: Water sampling guidelines and experimental protocols.
Environmental DNA, 3, 8–13. (2021)

  • DOI: 10.1002/edn3.1218
  • 環境DNA解析は、これまでの手法には無い長所を持つ生態系モニタリング手法として、この数年の間に急速に広がりつつあります。こうして生み出される大規模データが持つポテンシャルをさらに活用するためには、当然、別々に生み出されたデータが比較可能であることが必須です。そしてそのためには、サンプリングや実験などの手法が標準化されていることが重要です。そこで、2018年に日本の本分野の研究者を中心に設立された環境DNA学会では「環境DNA調査・実験マニュアル」を日本語および英語で公開しています。本コメンタリー論文では、その紹介を行なっています。
  • Banner 環境DNA調査・実験マニュアル(環境DNA学会)

76.
Adrian M Altenhoff, Javier Garrayo-Ventas, Salvatore Cosentino, David Emms, Natasha M Glover, Ana Hernández-Plaza, Yannis Nevers, Vicky Sundesha, Damian Szklarczyk, José M Fernández, Laia Codó, Quest for Orthologs Consortium; Josep Ll Gelpi, Jaime Huerta-Cepas, Wataru Iwasaki, Steven Kelly, Odile Lecompte, Matthieu Muffato, Maria J Martin, Salvador Capella-Gutierrez, Paul D Thomas, Erik Sonnhammer, and Christophe Dessimoz.
The Quest for Orthologs benchmark service and consensus calls in 2020.
Nucleic Acids Research, 48, W538-W545. (2020)

  • DOI: 10.1093/nar/gkaa308 / PubMed: 32374845
  • Banner Quest for Orthologs Website
  • Banner Orthology Benchmarking Service
  • 一般に、科学研究上の技術の発展のためには、その分野の研究者による「競争」と「協力」のバランスが重要です。特にバイオインフォマティクス分野においては、それぞれの研究者が開発した情報技術を偏りなく客観的に比較する「ベンチマーク」の枠組みを協力して開発し、本質的な技術向上へとリソースを集中させるエコシステムを構築することが理想的です。ゲノム進化・分子進化解析など、生命進化の謎を紐解く上で前提となる重要な技術であるオルソログ遺伝子解析の分野では、そうした国際的な枠組みとして「Quest for Orthologsコンソーシアム」を確立してきました。本論文ではその取り組みの現状・意義・展望について概説しています。

75.
Tsukasa Fukunaga and Wataru Iwasaki.
Logicome Profiler: Exhaustive detection of statistically significant logic relationships from comparative omics data.
PLOS ONE, 15, e0232106. (2020)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0232106 / PubMed: 32357172
  • 比較ゲノムデータや多サンプルのトランスクリプトーム・メタゲノムデータなど、多くの生物情報科学分野のデータは、0と1からなる「バイナリー行列」として縮約・比較解析することができます。こうしたバイナリー行列データの解析では、例えば類似したパターンを持つペアやそのネットワークを取り出すことがよく行われてきましたが、そうした「2項間関係」は自然界の法則を記述する上では不十分です。本研究で開発したLogicome Profilerは、一般のバイナリー行列データから、統計的に有意な「3項間関係」(例えば「遺伝子Aがあり遺伝子Bがない時に限って遺伝子Cがある」など)を網羅的に抽出します(Logicome = 論理Logicの全体ome)。Logicome Profilerは原理的に様々なデータに適用可能であり、幅広い応用が期待されます。
  • Banner Logicome Profiler Website

74.
Yuji Tokumoto, Kayo Hashimoto, Takashi Soyano, Seishiro Aoki, Wataru Iwasaki, Mai Fukuhara, Tomomi Nakagawa, Kazuhiko Saeki, Jun Yokoyama, Hironori Fujita, and Masayoshi Kawaguchi.
Assessment of Polygala paniculata (Polygalaceae) characteristics for evolutionary studies of legume–rhizobia symbiosis.
Journal of Plant Research, 133, 109-122. (2020)

  • DOI: 10.1007/s10265-019-01159-x / PubMed: 31828682
  • Selected as JPR Best Paper Award in 2020.
  • 窒素固定共生を行う植物は、マメ科植物を含むマメ目のみならず、ブナ目、バラ目、ウリ目の植物にも幅広く存在しています。最近、これらの「窒素固定クレード」のゲノム解析により、マメ目やバラ目の共通祖先植物は根粒菌との共生能を有し、その後、共生が複数回欠失したという進化シナリオが提唱されています。本研究では、マメ科植物と近縁でありながら根粒菌とは共生しないヒメハギ科カスミヒメハギPolygala paniculataを新たな実験植物として導入しました。窒素固定共生能を持つマメ科植物と、共生能力を消失してしまったと考えられるカスミヒメハギを比較することで、窒素固定共生の遺伝的基盤の研究が進むことが期待されます。

73.
David M. Needham*, Susumu Yoshizawa*, Toshiaki Hosaka*, Camille Poirier, Chang Jae Choi, Elisabeth Hehenberger, Nicholas A. T. Irwin, Susanne Wilken, Cheuk-Man Yung, Charles Bachy, Rika Kurihara, Yu Nakajima, Keiichi Kojima, Tomomi Kimura-Someya, Guy Leonard, Rex R. Malmstrom, Daniel R. Mende, Daniel K. Olson, Yuki Sudo, Sebastian Sudek, Thomas A. Richards, Edward F. DeLong, Patrick J. Keeling, Alyson E. Santoro, Mikako Shirouzu, Wataru Iwasaki (Co-Corresponding Author), and Alexandra Z. Worden.
A distinct lineage of giant viruses brings a rhodopsin photosystem to unicellular marine predators.
Proc Natl Acad Sci U S A, 116, 20574-20583. (2019)

  • DOI: 10.1073/pnas.1907517116 / PubMed: 31548428
  • これまでのウイルスの常識を覆し、より生物に近いゲノムを持つ「巨大ウイルス」が近年注目を集めています。数多くの手法を組み合わせた国際共同研究である本研究では、まず、シングルセルメタゲノミクスにより、外洋のウイルスとして最大のゲノムサイズを持ち、かつ、海洋性巨大ウイルスの宿主として良く知られる藻類ではなく襟鞭毛虫に感染するミミウイルス科の巨大ウイルスを発見しました。さらに、このウイルスゲノムにもコードされているウイルス型ロドプシンについて、X線結晶構造解析によって分子構造を詳細に解明するとともに、実際に細胞で発現させると光感受性プロトンポンプ活性を持つことを明らかにしました。このことは、ウイルスがロドプシン遺伝子を感染時に持ち込むことで、宿主生物に光利用能力を新たに"インストール"するという巧みな戦略を取っていることを示唆しています。ウイルス型ロドプシンは海洋メタゲノムデータに広く見られることから、こうした「宿主生物への光利用能力の付与」は、巨大ウイルスの生態や進化において本質的な役割を果たしていると考えられます。

72.
Shotaro Hirase, Ayumi Tezuka, Atsushi J. Nagano, Kiyoshi Kikuchi, and Wataru Iwasaki.
Genetic isolation by distance in the yellowfin goby populations revealed by RAD sequencing.
Ichthyological Research, 67, 98–104 (2020)

  • DOI: 10.1007/s10228-019-00709-6
  • 日本の沿岸に生息するハゼ類は、一般に、日本海型と太平洋型の2グループへの遺伝的分化を示すことが知られています。これに対しマハゼでは、過去のミトコンドリアDNAの解析によって、そのような遺伝的分化が見られないことが示唆されてきました。本研究では、核ゲノムRAD-Seq解析により、実際に、日本沿岸のマハゼは2グループへの遺伝的分化ではなく、日本海から太平洋にわたって距離による隔離(Isolation by distance)を示すことを明らかにしました。加えて、幼生の分散速度を定量的に推定することにより、その分散速度が日本海と太平洋で異なることを明らかにしました。

71.
Hui Zhang, Susumu Yoshizawa, Wataru Iwasaki, and Weiwei Xian.
Seasonal fish assemblage structure using environmental DNA in the Yangtze Estuary and its adjacent waters.
Frontiers in Marine Science, 6, 515. (2019)

  • DOI: 10.3389/fmars.2019.00515
  • 長江(揚子江)河口は様々な水産種の繁殖に重要な水域ですが、近年、その水産資源が多様性・量ともに減少を続けていることが伝統的な生態系調査によって示唆されてきました。本研究では、水サンプルのみを必要とし、より包括的な生態系調査を可能にする環境DNA解析を長江河口の20地点の季節性解析に適用することで、その有用性を検討しました。具体的には、季節性変動が見られるとともに、水温、塩分、溶存酸素量といったパラメータの影響を環境DNA解析が受けることが明らかになりました。今後さらに知見を積み重ねていくことで、環境DNA解析が国際的な生態系調査に使われていくことが期待されます。

70.
Motomu Matsui and Wataru Iwasaki.
Graph splitting: A graph-based approach for superfamily-scale phylogenetic tree reconstruction.
Systematic Biology, 69, 265-279. (2020)

  • DOI: 10.1093/sysbio/syz049 / PubMed: 31364707
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • Banner Graph Splitting Website
  • 原初の生命から現在に至るまで、生命はどのように進化してきたのか?こうした「究極の問い」に答えるためには、極めて長い進化史を解き明かすことが必要です。しかし、既存の分子系統解析手法はいずれも多重配列アライメントに依存した手法であるため、こうした問題に適用することは困難でした。本研究では、長い進化史を紐解くことを可能にする新たな分子系統解析手法「Graph Splitting法(GS法)」を開発しました。また進化シミュレーションおよび実際の遺伝子配列データに基づく検証を行うことで、GS法は既存手法よりも高い精度で分子系統樹を推定可能であることを示しました。

69.
Hikari Yoshitane, Yoshimasa Asano, Aya Sagami, Seinosuke Sakai, Yutaka Suzuki, Hitoshi Okamura, Wataru Iwasaki, Haruka Ozaki, and Yoshitaka Fukada.
Functional D-box sequences reset the circadian clock and drive mRNA rhythms.
Communications Biology, 2, 300. (2019)

  • DOI: 10.1038/s42003-019-0522-3 / PubMed: 31428688
  • 約24時間周期で刻まれる体内時計は生体の維持にとって重要であり、その転写リズムを生み出す時計シス配列の一つとしてD-box配列が知られています。しかし、具体的にゲノム領域のどこでD-box配列が機能しているのか、また実際にどのようなDNA配列が使われているのか、その詳細は不明でした。本研究では、D-box配列を認識する転写因子を対象としたChIP-Seq解析により、1,490カ所のD-box領域を決定しました。また、新しいバイオインフォマティクス技術MOCCS2を開発し、実際に生体内でD-boxとして機能しているDNA塩基配列を網羅的に抽出しました。

68.
Sira Sriswasdi, Masako Takashima, Ri-ichiroh Manabe, Moriya Ohkuma, and Wataru Iwasaki.
Genome and transcriptome evolve separately in recently hybridized Trichosporon fungi.
Communications Biology, 2, 263. (2019)

  • DOI: 10.1038/s42003-019-0515-2 / PubMed: 31341962
  • 異なるゲノムが合わさって新たな生物種を生み出す「ハイブリッド化」は、新しい性質を持つ生物種の進化に繋がる重要なイベントです。一方でハイブリッド化においては、異なるゲノムに由来する制御ネットワークが混在するという、生命システム維持にとって極めて重大な問題も起こらざるを得ません。本研究では、ハイブリッド化したTrichosporon属菌類の比較ゲノム・比較トランスクリプトームの統合解析により、遺伝子配列レベルと遺伝子発現レベルでの進化が明確に別々に、一方でこの不和合の解消に共に働くという興味深い現象を明らかにしました。また合わせて、転写制御システムの進化がハイブリッド化の生じ方によって大きく異なった道筋を通ることも明らかにしました。

67.
Sohta A Ishikawa, Anna Zhukova, Wataru Iwasaki, and Olivier Gascuel.
A fast likelihood method to reconstruct and visualize ancestral scenarios.
Molecular Biology and Evolution, 36, 2069-2085. (2019)

  • DOI: 10.1093/molbev/msz131 / PubMed: 31127303
  • Banner PastML Website
  • 進化情報学において「祖先状態復元」は生物進化のプロセスを知るための重要な手段です。その具体的な手法としては周辺事後確率を推定するものと同時確率を推定するものがありますが、いずれも、結果をそのまま可視化して解釈を行うことは困難でした。本研究では意思決定理論で用いられるBrier scoreと可視化上の工夫により、解釈が容易な祖先状態復元ソフトウェアPastMLとして実装し、ウェブサーバーを公開しました。論文ではさらに実際にデングウイルスやHIVウイルスの祖先状態復元を行い、その有効性を検証しています。

66.
Masako Takashima, Ri-ichiroh Manabe, Yuki Nishimura, Rikiya Endoh, Moriya Ohkuma, Sira Sriswasdi, Takashi Sugita, and Wataru Iwasaki.
Recognition and delineation of yeast genera based on genomic data: Lessons from Trichosporonales.
Fungal Genetics and Biology, 130, 31-42. (2019)

  • DOI: 10.1016/j.fgb.2019.04.013 / PubMed: 31026590
  • 生物の分類については、いわゆる生物学的種概念をはじめ多くの議論がなされてきましたが、特に種より上の階層の分類については多くの問題が残されています。本研究では、真菌Trichosporonales目を対象にゲノムデータに基づいた再検討を行い、PascuaとPrillingeraという2つの属を新たに提唱しました。ゲノムデータは、生物進化研究の基盤となるのみならず、種より上の階層を含めた分類を行う上でも重要な指標を与えると私たちは考えています。

65.
Mio Takeuchi, Haruka Ozaki, Satoshi Hiraoka, Yoichi Kamagata, Susumu Sakata, Hideyoshi Yoshioka, and Wataru Iwasaki.
Possible cross-feeding pathway of facultative methylotroph Methyloceanibacter caenitepidi Gela4 on methanotroph Methylocaldum marinum S8.
PLOS ONE, 14, e0213535. (2019)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0213535 / PubMed: 30870453
  • メタンを直接酸化できないメチル栄養細菌(メチロトロフ)は、しばしばメタン酸化細菌(メタノトロフ)と共存しており、両者はメタノールを介することで栄養共生していると推定されてきました。本研究では、メチロトロフの単独培養系およびメタノトロフとの共培養系を確立し、さらに、PacBioによるゲノム解析、RNA-seq解析、化合物解析を行うことで、両者の栄養共生がメタノール以外の物質を介して行われている可能性を提示しました。

64.
Satoshi Hiraoka, Yusuke Okazaki, Mizue Anda, Atsushi Toyoda, Shin-ichi Nakano, and Wataru Iwasaki.
Metaepigenomic analysis reveals the unexplored diversity of DNA methylation in an environmental prokaryotic community.
Nature Communications, 10, 159. (2019)

  • DOI: 10.1038/s41467-018-08103-y / PubMed: 30635580
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese) / AORI of UTokyo (in Japanese) / Grad Sch Frontier Sci of UTokyo (in Japanese)
  • 原核生物においても、ゲノム配列自体は変わらずにその性質が化学修飾などによって変わるエピジェネティクス(エピゲノム)は重要な役割を果たしています。しかし、環境細菌叢を構成する原核生物のほとんどは培養実験が難しいことから、その全貌は全くわかっていないのが現状です。本研究では、環境細菌叢を直接かつ包括的に解析するメタゲノムのアプローチをエピゲノムと組み合わせることで、この未開拓領域の解明を可能にする新たな手法「メタエピゲノム解析」の提唱と実証を行いました。具体的には、琵琶湖の環境細菌叢から多様なDNAメチル化モチーフ配列を検出したほか、それらのモチーフ配列を認識する新規のDNAメチル化酵素の同定までを行いました。

63.
Salvatore Cosentino and Wataru Iwasaki.
SonicParanoid: fast, accurate and easy orthology inference.
Bioinformatics, 35, 149–151. (2019)

  • DOI: 10.1093/bioinformatics/bty631 / PubMed: 30032301
  • Banner SonicParanoid Website
  • 重要遺伝子の同定、生命の進化史の解明、そして正確なゲノムアノテーションまで、ゲノムデータを用いた様々な解析の基礎になる技術が「オルソログ遺伝子推定」です。ところが、近年ではゲノムデータが特に急激に増大しているにも関わらず、既存のオルソログ遺伝子推定プログラムは遅かったり使いにくかったりする大きな問題があります。そこで、この研究では、高速で、正確で、使いやすいオルソログ遺伝子推定プログラムSonicParanoidを開発しました。

62.
Yukuto Sato, Masaki Miya, Tsukasa Fukunaga, Tetsuya Sado, and Wataru Iwasaki.
MitoFish and MiFish pipeline: a mitochondrial genome database of fish with an analysis pipeline for environmental DNA metabarcoding.
Molecular Biology and Evolution, 35, 1553–1555. (2018)

  • DOI: 10.1093/molbev/msy074 / PubMed: 29668970
  • Banner MiFish Pipeline Website
  • 私たちが開発・運用している魚類ミトコンドリアゲノムデータベースMitoFishおよびアノテーションプログラムMitoAnnotatorは、年間40,000件以上のアクセスがあるなど、魚類の進化や生態に興味を持つ世界中の研究者によって活用されています。本論文では、その機能アップデートに加えて、MiFishプライマーなどを用いた環境DNA解析を行う研究者にとって有用な魚類環境DNA解析パイプライン「MiFish Pipeline」の開発について報告しています。

61.
Masayuki Ushio, Koichi Murata, Tetsuya Sado, Isao Nishiumi, Masamichi Takeshita, Wataru Iwasaki, and Masaki Miya.
Demonstration of the potential of environmental DNA as a tool for the detection of avian species.
Scientific Reports, 8, 4493. (2018)

  • DOI: 10.1038/s41598-018-22817-5 / PubMed: 29540790
  • 私たちはこれまでの研究で、環境DNAを解析するためのユニバーサルプライマーとして、魚類を対象としたMiFish(Miya et al., 2015)および哺乳類を対象としたMiMammal(Ushio et al., 2017)を開発してきました。今回の研究では、新たに鳥類を対象とした「MiBird」を開発し、その実証およびインシリコでの評価を行いました。鳥類の多様性研究、種間相互作用解析、渡り鳥の移動パターンの解析などへの活用が期待されます。

60.
Daniel K. Olson, Susumu Yoshizawa, Dominique Boeuf, Wataru Iwasaki, and Edward F. DeLong.
Proteorhodopsin variability and distribution in the North Pacific Subtropical Gyre.
The ISME Journal, 12, 1047–1060. (2018)

  • DOI: 10.1038/s41396-018-0074-4 / PubMed: 29476140
  • プロテオロドプシンは海洋に分布する多くの細菌が持つ光駆動プロトンポンプであり、環境中には膨大なプロテオロドプシン遺伝子が存在していると考えられますが、その配列多様性や系統的分布・空間分布との関連はまだ十分に解明されていません。本研究では、ハワイ・オアフ島の北に位置する観測点Station ALOHAにおいて、表層から水深1000mまでのメタゲノム解析を1年半にわたって行いました。これにより、これまで知られていなかった新しいタイプのものを含めた1,510のプロテオロドプシン遺伝子の配列多様性を明らかにするとともに、系統的分布・空間分布との関連について解析しました。

59.
Tazro Ohta, Takeshi Kawashima, Natsuko O. Shinozaki, Akito Dobashi, Satoshi Hiraoka, Tatsuhiko Hoshino, Keiichi Kanno, Takafumi Kataoka, Shuichi Kawashima, Motomu Matsui, Wataru Nemoto, Suguru Nishijima, Natsuki Suganuma, Haruo Suzuki, Y-h. Taguchi, Yoichi Takenaka, Yosuke Tanigawa, Momoka Tsuneyoshi, Kazutoshi Yoshitake, Yukuto Sato, Riu Yamashita, Kazuharu Arakawa, and Wataru Iwasaki.
Collaborative environmental DNA sampling from petal surfaces of flowering cherry Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’ across the Japanese archipelago.
Journal of Plant Research, 131, 709–717. (2018)

  • DOI: 10.1007/s10265-018-1017-x / PubMed: 29460198
  • Introductory Article: NIG (in Japanese)
  • 全国からソメイヨシノの花びら表面のスワブサンプルを集めてAmplicon-Seq解析を行ったNGS現場の会第四回研究会(2015年開催)の企画、"Ohanami Project"の報告論文です。本プロジェクトでは、日本全国で同時期に開花するソメイヨシノ(Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’)の花びら表面からのサンプリングを可能にするため、全国の研究会参加者によるクラウドソーシングという研究アプローチが用いられました。ソメイヨシノの自生しない沖縄県を除く全都道府県から594ものサンプルが集まり、解析を行った結果、特に、開花直後の桜の花びらに様々な植物由来のDNAが存在していることが明らかになりました。

58.
Yohei Kumagai, Susumu Yoshizawa, Yu Nakajima, Mai Watanabe, Tsukasa Fukunaga, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Kenshiro Oshima, Masahira Hattori, Masahiko Ikeuchi, Kazuhiro Kogure, Edward F. DeLong, and Wataru Iwasaki.
Solar-panel and parasol strategies shape the proteorhodopsin distribution pattern in marine Flavobacteriia.
The ISME Journal, 12, 1329-1343. (2018)

  • DOI: 10.1038/s41396-018-0058-4 / PubMed: 29410487
  • Press Release: AORI of UTokyo (in Japanese) / Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • 海洋表層に生息する細菌の約半数が持つ「プロテオロドプシン」は、光からエネルギーを受け取る光受容体として、細菌の海洋表層への適応に大きく貢献していると考えられています。しかしそれならば、そもそもなぜ、そのように重要なプロテオロドプシンを持つ海洋細菌と持たない海洋細菌がいるのでしょうか?本研究では大規模比較ゲノム解析により、プロテオロドプシンを持たない細菌は、光エネルギーを利用する「ソーラーパネル型」ではなく色素で光を遮る「パラソル型」の適応戦略をとっていることを示しました。すなわち、太陽からの莫大な光エネルギーにさらされる海洋表層の細菌は、単にその恩恵を受けるだけではなく、「光を利用するか、光を避けるか」という“究極の選択”を迫られていることになります。

57.
Md. Nurul Haider, Masahiko Nishimura, Minoru Ijichi, Ching-chia Yang, Wataru Iwasaki, and Kazuhiro Kogure.
Habitability analyses of aquatic bacteria.
Journal of Oceanography, 74, 197–207. (2018)

  • DOI: 10.1007/s10872-017-0449-6
  • 私たちが開発してきた環境横断的微生物叢メタ解析データベースMetaMetaDB(Yang and Iwasaki, 2014)は、アンプリコンシーケンス解析などによって得られる微生物叢データから、一般的に行われている系統組成解析の代わりに、より直感的な生態学的解釈につながる「微生物由来環境組成解析」を可能にします。本研究では、水圏微生物叢データへの適用により、MetaMetaDB解析の微生物生態学研究における有用性を確認しました。

56.
Masako Takashima*, Sira Sriswasdi*, Ri-ichiroh Manabe, Moriya Ohkuma, Takashi Sugita, and Wataru Iwasaki.
A Trichosporonales genome tree based on 27 haploid and three evolutionarily.
Yeast, 35, 99-111. (2017)

  • DOI: 10.1002/yea.3284 / PubMed: 29027707
  • 本研究では、担子菌進化の「バックボーン系統樹」を決定するために、25種のTrichosporonales目の真菌種のゲノム解析を行いました。また、Cutaneotrichosporon mucoidesがハイブリッドゲノムを持つことを新たに確認し、その解析を行いました。本研究のデータは担子菌の進化を解明する上で、また、異質多倍数体ゲノムの進化メカニズムを探る上で、基盤となるものです。

55.
Marty Kwok Shing Wong, Takehiro Tsukada, Nobuhiro Ogawa, Supriya Pipil, Haruka Ozaki, Yutaka Suzuki, Wataru Iwasaki, and Yoshio Takei.
A sodium binding system alleviates acute salt stress during seawater acclimation in eels.
Zoological Letters, 3, 22. (2017)

  • DOI: 10.1186/s40851-017-0081-8 / PubMed: 29255617
  • 淡水と海水は浸透圧が大きく異なりますが、ウナギなどある種の魚類は、両者を行き来しても体内の浸透圧を一定に保つことができます。淡水から海水への移行後、長期的に浸透圧を調節する仕組みについてはこれまでの研究で明らかになりつつありましたが、移行の直後にも浸透圧を保つことを可能にしている分子メカニズムは不明でした。本研究では、粘液中の何らかのナトリウム結合性の分子によってその調整が行われることを明らかにするとともに、トランスクリプトーム解析によって、Notch、β-catenin、TGF βパスウェイが哺乳類における浸透圧調節と部分的に類似した仕組みで働いている可能性を示唆しました。

54.
Sira Sriswasdi, Ching-chia Yang, and Wataru Iwasaki.
Generalist species drive microbial dispersion and evolution.
Nature Communications, 8, 1162. (2017)

  • DOI: 10.1038/s41467-017-01265-1 / PubMed: 29079803
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese)
  • Introductory Article (in Japanese): ジェネラリストが駆動する微生物の分散と進化, Nature Communications おすすめのコンテンツ, Nature Japan
  • Introductory Article (in Japanese): 生物世界を俯瞰する生物情報科学, 学部生に伝える研究最前線, 東京大学大学院理学系研究科・理学部
  • 自然界には、様々な環境に対応できる“ジェネラリスト”戦略をとる生物がいる一方で、特定の環境に特化した“スペシャリスト”戦略をとる生物もいます。このことは直感的にも理解しやすいことですが、一方で、「ではどちらの戦略が有利なのか?」「なぜ2つの戦略をとる生物が共存するのか?」といった根本的な疑問に対する俯瞰的・実証的な解析はされてきませんでした。本研究では、61種類の環境から得られた微生物群集大量シーケンスデータの解析と、多様な微生物グループにわたる進化解析とを組み合わせた生物情報科学的手法によって、ジェネラリストはスペシャリストに比べて高い種分化率と絶滅への耐性を持ち、子孫を繁栄させる上で有利であることを明らかにしました。加えて、ジェネラリストは進化の過程で容易にスペシャリストへと変わる傾向があることがわかりました。微生物生態系におけるジェネラリストとスペシャリストの共存のバランスは、こうした「ジェネラリストによって駆動される進化」によって保たれていると考えられます。

53.
Satoshi Hiraoka, Masaya Miyahara, Kazushi Fujii, Asako Machiyama, and Wataru Iwasaki.
Seasonal analysis of microbial communities in precipitation in the Greater Tokyo Area, Japan.
Frontiers in Microbiology, 8, 1506. (2017)

  • DOI: 10.3389/fmicb.2017.01506 / PubMed: 28848519
  • 微生物は目には見えませんが地球上のあらゆる環境に存在して地球環境を支えており、環境の間でダイナミックに移動――つまり「旅」を――しています。例えば、空から降ってくる雨の中にも様々な種類の微生物が潜んでおり、そうした微生物の移動と拡散に重要な役割を果たしています。本研究では、1年に渡る雨の回収と微生物のamplicon-seq解析を通じて、雨の中にはどのような種類の微生物がいるのか、そしてそのような雨の中の微生物は一体どこから「旅」をしてきているのか、明らかにしました。

52.
Masayuki Ushio, Hisato Fukuda, Toshiki Inoue, Kobayashi Makoto, Osamu Kishida, Keiichi Sato, Koichi Murata, Masato Nikaido, Tetsuya Sado, Yukuto Sato, Masamichi Takeshita, Wataru Iwasaki, Hiroki Yamanaka, Michio Kondoh, and Masaki Miya.
Environmental DNA enables detection of terrestrial mammals from forest pond water.
Molecular Ecology Resources, 17, e63-e75. (2017)

  • DOI: 10.1111/1755-0998.12690 / PubMed: 28603873
  • 私たちはこれまでの研究で、環境水中に存在する多様な魚類の環境DNAを解析し生態系の全貌を明らかにするためのツールとして、ユニバーサルプライマーMiFishを開発してきました(Miya et al., 2015)。一方で、生活において水と接触するのは水生生物には限りません。その意味で、環境DNA解析技術は、より幅広い対象の生物に適用可能な、大きなポテンシャルを持つ技術のはずです。本研究では、様々な哺乳類が接触した水などに残す環境DNAを解析するための新たなユニバーサルプライマーMiMammalを開発し、その性能をインシリコ解析ならびに動物園での実験により示しました。

51.
Shotaro Hirase, Sherrie Chambers, Kathryn Hassell, Melissa Carew, Vincent Pettigrove, Kiyoshi Soyano, Masaki Nagae, and Wataru Iwasaki.
Phylogeography of the yellowfin goby Acanthogobius flavimanus in native and non-native distributions.
Marine Biology, 164, 106. (2017)

  • DOI: 10.1007/s00227-017-3137-6
  • 非在来種の環境への移入は、生態系にとって最も重要な脅威の一つです。そのような非在来種の環境への移入がどのように起こったかを明らかにする上では、移入前の在来種と移入後の非在来種の遺伝子データの比較解析が有効です。この研究では、北東アジアからアメリカやオーストラリアに移入した生物種であるマハゼについて、ミトコンドリアDNAデータを解析することで、マハゼが新たな環境に移入して集団サイズを増大させてきた過程を解析しました。

50. (Review in Japanese)
岩崎渉
バイオインフォマティクスの全体像
実験医学35,713-719.(2017)

  • 実験医学増刊『生命科学で使える はじめての数理モデルとシミュレーション』(鈴木貴・久保田浩行/編)収録(pp. 53-59)。この総説では、バイオインフォマティクスに関する全体像を把握し、そこで必要とされる基本的な技術や考え方を身につけるための道筋について概説しています。
  • Publisher / Amazon.co.jp

49.
Tsukasa Fukunaga and Wataru Iwasaki.
Inactivity periods and postural change speed can explain atypical postural change patterns of Caenorhabditis elegans mutants.
BMC Bioinformatics, 18, 46. (2017)

  • DOI: 10.1186/s12859-016-1408-8 / PubMed: 28103804
  • ゲノム研究が急速に発展する一方で、それらのゲノムを最終的に表現型に結びつけていく上でこれから鍵を握ってくると考えられるのが、動物行動など生物の表現型のバイオインフォマティクス解析です。この研究では、この分野におけるモデル生物である線虫C. elegans322株の姿勢を混合ガウス分布を用いて離散的な状態の確率的な重ね合わせとして表現しました。これによって、線虫の行動解析においては静止時間と姿勢変化速度の2つの要素を考慮することが重要であることを明らかにするとともに、配列類似性検索では予測できない新規の遺伝子機能類似性を我々のアプローチによって推定できることを示しました。

48.
Koji Yano, Seishiro Aoki, Meng Liu, Yosuke Umehara, Norio Suganuma, Wataru Iwasaki, Shusei Sato, Takashi Soyano, Hiroshi Kouchi and Masayoshi Kawaguchi.
Function and evolution of a Lotus japonicus AP2/ERF family transcription factor that is required for development of infection threads.
DNA Research, 24, 193-203. (2017)

  • DOI: 10.1093/dnares/dsw052 / PubMed: 28028038
  • マメ科植物と根粒菌による根粒共生は、地球生態系で大きな役割を果たすのみならず、生物共生がどのように分子レベルで進化するかのモデルとしても重要な研究対象です。この研究では、変異体スクリーニングにより、根粒形成過程においてミヤコグサのAP2/ERF転写因子が重要な働きをすることを明らかにしました。さらに、この発見をもとに多種の植物ゲノム情報を用いた分子系統解析を行い、この転写因子が過去に遺伝子重複を起こした後に機能分化をした可能性について論じています。

47.
Yoshio Takei, Marty Kwok-Shing Wong, Supriya Pipil, Haruka Ozaki, Yutaka Suzuki, Wataru Iwasaki, and Makoto Kusakabe.
Molecular mechanisms underlying active desalination and low water permeability in the esophagus of eels acclimated to seawater.
American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology, 312, R231-R244. (2017)

  • DOI: 10.1152/ajpregu.00465.2016 / PubMed: 28003213
  • Introductory Article: Molecular physiological exploration beyond the transcriptome., American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology, 312, R229–R230. (2017)
  • 魚類は海水中では自らよりも浸透圧の高い海水を飲むことによって水分を取り込みますが、その過程では食道でNaClを吸収することが大きな役割を果たします。しかし、その分子メカニズムの多くはまだ良くわかっていません。この研究では、両環境を行き来できる広塩性魚類であるウナギ食道のトランスクリプトーム解析を行い、その巧みな浸透圧調節メカニズムに関わる遺伝子群を明らかにしました。

46.
Hideki Terajima, Hikari Yoshitane, Haruka Ozaki, Yutaka Suzuki, Shigeki Shimba, Shinya Kuroda, Wataru Iwasaki, and Yoshitaka Fukada.
ADARB1 catalyzes circadian A-to-I editing and regulates RNA rhythm.
Nature Genetics, 49, 146-151. (2017)

  • DOI: 10.1038/ng.3731 / PubMed: 27893733
  • 生体の諸活動に見られる該日リズムの背後では、多くのmRNAがリズミックな調節を受けています。その制御の仕組みについて多くの研究がなされてきましたが、近年の超並列型シーケンサーを用いた研究の進展によって、これまで考えられてきた教科書的な転写翻訳フィードバックモデルでは説明できないことが明らかになりつつあります。本研究ではA-to-I RNA編集を行う酵素であるADAR2/ADARB1がリズミックに制御されていることを網羅的なデータ解析によって発見し、哺乳類の該日時計制御において、転写後のRNA上の遺伝情報の書き換えが重要な役割を果たすことを明らかにしました。

45. (Book chapter, review in Japanese)
岩崎渉.
環境DNA解析
服部正平編『実験医学別冊 NGSアプリケーション 今すぐ始める! メタゲノム解析 実験プロトコール』,170-174. (2016)

  • Image Publisher / Amazon.co.jp
  • 本書は、環境サンプル中に含まれるDNAを分析することで微生物叢に迫るアプローチであるメタゲノム解析に関するプロトコール本です。これに対して近年、環境サンプル中には微生物に限らず大型生物に由来するDNAも「環境DNA」として分析可能な量で含まれることが明らかになってきました。本チャプターでは、近年注目を集めている環境DNA解析について外観するとともに、主にメタゲノム解析と比較しつつこの新たな技術の課題と展望について述べています。

44. (Review in Japanese)
岩崎渉
遺伝子発現ネットワークとバイオインフォマティクス
医学のあゆみ259,865-869.(2016)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 医学のあゆみ2016年11月19日号(あゆみ「インタラクトーム医科学」)収録。広範な生命現象を制御している遺伝子発現ネットワークを解明するうえで重要なバイオインフォマティクス解析のうち、特に次世代シーケンサーによって得られたデータの解析を中心に概説しています。

43.
Sira Sriswasdi, Masako Takashima, Ri-ichiroh Manabe, Moriya Ohkuma, Takashi Sugita, and Wataru Iwasaki.
Global deceleration of gene evolution following recent genome hybridizations in fungi.
Genome Research, 26, 1081-1090. (2016)

  • DOI: 10.1101/gr.205948.116 / PubMed: 27440871
  • Press Release: Grad Sch Sci of UTokyo (in Japanese) / RIKEN BRC (in Japanese)
  • Banner Featured in Kagaku Kogyo Nippo newspaper (July 21, 2016).
  • 異なる生物種のゲノムが混ざり合ったハイブリッドゲノムは生命の設計図であるゲノムを大幅に変化させ、生命進化の可能性を大きく広げる潜在力を持ちますが、ハイブリッドゲノムが新たな生物種のゲノムとして受け継がれていくまでに安定化する仕組みは良くわかっていません。この研究では、近縁種で2度独立にハイブリッドゲノムが生じたトリコスポロン属酵母のゲノム解析を行い、その安定化に遺伝子の進化速度の低下や転写・翻訳に関わる遺伝子の欠失が関わっていることを明らかにしました。

42.
Shotaro Hirase, Yusuke Yokoyama, Cin-Ty Leed, and Wataru Iwasaki.
The Pliocene-Pleistocene transition had dual effects on north American migratory bird speciation.
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 462, 85-91. (2016)

  • DOI: 10.1016/j.palaeo.2016.09.006
  • Corrigendum (June 2017): 10.1016/j.palaeo.2017.04.008
  • Introductory Article: AORI of UTokyo (in Japanese)
  • 地球環境の大規模な変動は生物進化に深い影響を与えると考えられます。とりわけ、約250万年前の鮮新世・更新世境界後に激しさを増した氷床の拡大と後退の繰り返しは、現在見られる個々の生物の進化のみならず、それらの進化のトレンドそのものに包括的な影響を与えた可能性があります。この研究では、北アメリカの渡り鳥に関するメタ系統学解析を行うことにより、鮮新世・更新世境界後には渡り鳥同士の種分化が予想通り加速されていた一方で、留鳥と渡り鳥の間の種分化は予想と異なり加速されていないことを見いだしました。

41.
Shotaro Hirase, Minoru Ikeda, Shun Hayasaka, Wataru Iwasaki, and Akihiro Kijima.
Stability of genetic diversity in an intertidal goby population after exposure to tsunami disturbance.
Marine Ecology, 37, 1161-1167. (2016)

  • DOI: 10.1111/maec.12377
  • 一般に巨大津波は沿岸生態系に大きな影響を及ぼし、その生物多様性を大きく減少させると考えられます。この研究では、宮城県牡鹿半島の岩礁帯に生息するアゴハゼ集団を用いて、2011年の東北津波前後での遺伝的多様性の変化を検証しました。その結果、驚くべきことに、予想に反して津波後の遺伝的多様性の減少は見られませんでした。自然撹乱の生態系への影響は実に複雑であり、今後より多くの生物種やサンプルを用いて検証していく必要があります。

40.
Marty Kwok-Shing Wong, Supriya Pipil, Haruka Ozaki, Yutaka Suzuki, Wataru Iwasaki, and Yoshio Takei.
Flexible selection of diversified Na+/K+-ATPase α-subunit isoforms for osmoregulation in teleosts.
Zoological Letters, 2, 15. (2016)

  • DOI: 10.1186/s40851-016-0050-7 / PubMed: 27489726
  • Na+/K+-ATPアーゼ (NKA)は、多くの動物で膜電位や浸透圧調整に大きな役割を果たしている酵素です。真骨魚類ゲノム中には複数のNKAパラログ遺伝子が存在しており、広塩性の魚の一部は海水中と淡水中でそれらを使い分けていることがわかっていましたが、そういった使い分けが進化上どのように生じたかは不明でした。この研究では、RNA-Seq解析と進化系統解析によってその進化的背景を明らかにするとともに、混乱していたパラログの命名法の修正を提案しています。

39. (Review)
Satoshi Hiraoka, Ching-chia Yang, and Wataru Iwasaki.
Metagenomics and bioinformatics in microbial ecology: Current status and beyond.
Microbes and Environments, 31, 204-212. (2016)

  • DOI: 10.1264/jsme2.ME16024 / PubMed: 27383682
  • Selected as the Most Cited Review Paper in This Three Years in M&E Digest 2019.
  • メタゲノム解析は難培養性の微生物も含めて微生物叢の全体像に光を当てるアプローチとしてすでに当然のものとなり、バイオインフォマティクスは大規模データを前提とした微生物生態学において不可欠な役割を果たしています。一方で、今後の本分野の展開を考えるならば、これらの解析に現状で存在する多くの限界についてもまた、目を向けないわけにはいきません。この総説では、特に後者の観点を重視しつつ、微生物生態学におけるメタゲノム解析とバイオインフォマティクスの現状を概観するとともに、今後の展開について論じています。

38.
Toshiaki Hosaka, Susumu Yoshizawa, Yu Nakajima, Noboru Ohsawa, Masakatsu Hato, Edward F. DeLong, Kazuhiro Kogure, Shigeyuki Yokoyama, Tomomi Kimura-Someya, Wataru Iwasaki (Co-Corresponding Author), and Mikako Shirouzu.
Structural mechanism for light-driven transport by a new type of chloride ion pump, Nonlabens marinus rhodopsin-3.
Journal of Biological Chemistry, 291, 17488-17495. (2016)

  • DOI: 10.1074/jbc.M116.728220 / PubMed: 27365396
  • Selected as Papers of the Week of Journal of Biological Chemistry (representing the top-2% overall importance).
  • 海洋細菌Nonlabens marinusのゲノム情報から発見された新たな微生物型ロドプシンは、塩化物イオンを細胞膜内向きにポンプする機能を持っているものの、同様の機能を持つ既知のロドプシンであるハロロドプシンとは進化系統的に大きく異なっていました。この研究では、その3次元構造を解析することにより、機能的には大きく異なるナトリウムイオンを外向きにポンプする微生物型ロドプシンと実は良く似ていることを明らかにしました。

37.
Shotaro Hirase, Hirohiko Takeshima, Mutsumi Nishida, and Wataru Iwasaki.
Parallel mitogenome sequencing alleviates random rooting effect in phylogeography.
Genome Biology and Evolution, 8, 1267-1278. (2016)

  • DOI: 10.1093/gbe/evw063 / PubMed: 27016485
  • Press Release: Sch Sci of UTokyo (in Japanese) / AORI of UTokyo (in Japanese)
  • Introductory Article (in Japanese): 分子系統地理学に正確な「根」をもたらす, 学部生に伝える研究最前線, 東京大学大学院理学系研究科・理学部
  • 分子系統樹から時間軸に関する情報を取り出すために欠かせないのが、外群を用いて分子系統樹の根を決定する「ルーティング」です。ルーティングは一般の分子系統解析においてもしばしば困難ですが、なかでも近縁の集団間の空間的・時間的な関係性を明らかにすることを目指す分子系統地理学においては、外群から集団内変異についての時間的な情報を得ることがしばしば本質的に難しいという問題があります(ランダムルーティング効果)。この研究では、超並列シーケンサを用いた高速度・低コストなミトコンドリアゲノムシーケンスによってこの問題を緩和できるとともに、新たな地域系統の発見など重要な知見が得られることを示しました。

36.
Haruka Ozaki and Wataru Iwasaki.
MOCCS: clarifying DNA-binding motif ambiguity using ChIP-Seq data.
Computational Biology and Chemistry, 63, 62-72. (2016)

  • DOI: 10.1016/j.compbiolchem.2016.01.014 / PubMed: 26971251
  • Banner MOCCS for ChIP-Seq Analysis
  • Accepted for a conference paper presentation at 14th Asia Pacific Bioinformatics Conference (APBC2016).
  • ゲノム配列にコードされた遺伝子ネットワークの構造、機能、進化を解明するためには、遺伝子発現制御を司る転写因子がどのようにDNA配列を認識しているかを網羅的かつ正確に明らかにすることが必要です。この研究では、そのためのバイオインフォマティクス手法MOCCS (Motif Centrality Analysis of ChIP-Seq) を開発・公開するとともに、シミュレーションデータおよび実データを用いた性能の評価を行いました。

35.
Satoshi Hiraoka, Asako Machiyama, Minoru Ijichi, Kentaro Inoue, Kenshiro Oshima, Masahira Hattori, Susumu Yoshizawa, Kazuhiro Kogure, and Wataru Iwasaki.
Genomic and metagenomic analysis of microbes in a soil environment affected by the 2011 Great East Japan Earthquake Tsunami.
BMC Genomics, 17, 53. (2016)

  • DOI: 10.1186/s12864-016-2380-4 / PubMed: 26764021
  • Introductory Article: Sequencing Study Finds Microbial Changes in Japan's Soil Following Tsunami, genomeweb (19 Jan, 2016).
  • 2011年の東北地方太平洋沖地震に伴う津波では海岸の生態系が一変し、土壌微生物生態系も大きな影響を受けました。この研究では、津波を受けた東北沿岸土壌から複数のArthrobacter属細菌を単離培養し、それらのゲノム配列に共通した変化が見られること、また、土壌メタゲノム解析の結果が土壌化学分析の結果と整合的であることなどを明らかにしました。

34. (Review in Japanese)
岩崎渉,佐藤行人,源利文,山中裕樹,荒木仁志,宮正樹.
環境DNA解析のインパクト
実験医学34,103-107.(2016)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 実験医学2016年1月号収録。これまでは迫ることが難しかった、生態系の全体像を捉えるための強力かつ新たな方法論として注目が高まっている「環境DNA」について、その研究の動向を簡単にまとめるとともに、環境DNAを一網打尽にできるユニバーサルプライマーの開発など最新の展開について論じた総説です。

33. (Review in Japanese)
岩崎由香,岩崎渉
ncRNAのバイオインフォマティクス解析
実験医学33,3379-3384.(2015)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 実験医学増刊『ノンコーディングRNAテキストブック 最新の医学・創薬研究、方法論とマイルストーン論文200報』(塩見美喜子・中川真一・浅原弘嗣/編)収録(pp. 183-188)。この総説では、ノンコーディングRNAのバイオインフォマティクス解析の典型的なワークフローを解説するとともに、今後の技術開発展望について概観しています。

32.
Masako Takashima, Ri-ichiroh Manabe, Wataru Iwasaki, Akira Ohyama, Moriya Ohkuma, and Takashi Sugita.
Selection of orthologous genes for construction of a highly resolved phylogenetic tree and clarification of the phylogeny of Trichosporonales species.
PLOS ONE, 10, e0131217. (2015)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0131217 / PubMed: 26241762
  • 菌類の分類体系は系統樹と表現型の双方によって構築されてきましたが、近年、例えば有性世代と無性世代の形態学的特徴が使用できなくなったことなどからゲノムデータを利用して分類体系を見直すことが求められつつあります。この研究では、担子菌門Trichosporonales目を例として、ゲノムデータに基づいた分子系統解析手法を提案しました。

31.
Masaki Miya, Yukuto Sato, Tsukasa Fukunaga, Tetsuya Sado, Jan Yde Poulsen, Keiichi Sato, Toshifumi Minamoto, Satoshi Yamamoto, Hiroki Yamanaka, Hitoshi Araki, Michio Kondoh, and Wataru Iwasaki.
MiFish, a set of universal PCR primers for metabarcoding environmental DNA from fishes: detection of more than 230 subtropical marine species.
Royal Society Open Science, 2, 150088. (2015)

  • DOI: 10.1098/rsos.150088 / PubMed: 26587265
  • Press Release: Sch Sci of UTokyo (in Japanese) / JST (in Japanese)
  • News Featured in NHK news (July 22, 2015) and several newspapers (Nikkei Shimbun, Nikkei Sangyo Shimbun, Asahi Shimbun, Yomiuri Shimbun, Okinawa Times, Ryukyu Shimpo, Chiba Nippo, etc.).
  • Selected as a highly-cited paper in Environment/Ecology (top 1% by citations for field and year in the Web of Science) by Clarivate.
  • 環境サンプル中には微生物のみならず大型生物が痕跡として残すDNAが存在することが最近明らかになり、「環境DNA」として注目が集まっています。この研究では、環境水中に存在する多様な魚類の環境DNAを超並列シーケンサーによって一網打尽に解析し、魚類生態系の全貌を明らかにするためのツールとして、魚類ミトコンドリアゲノムの網羅的解析に基づいたユニバーサルプライマーMiFishを開発しました。

30.
Hirotsugu Ishizu, Yuka W. Iwasaki, Shigeki Hirakata, Haruka Ozaki, Wataru Iwasaki, Haruhiko Siomi, and Mikiko C. Siomi.
Somatic primary piRNA biogenesis driven by cis-acting RNA elements and trans-acting Yb.
Cell Reports, 12, 429-440. (2015)

  • DOI: 10.1016/j.celrep.2015.06.035 / PubMed: 26166564
  • piRNAは真核生物ゲノムの大部分を占めるトランスポゾンの活性化を抑える重要な小分子RNAです。この研究では、piRNAの前駆体となる転写産物をpiRNA生合成経路へと導く機能を持つシスエレメントを同定し、CLIP-Seq解析などを行うことでYbタンパク質がシスエレメントの特異的な配列や構造を認識する分子機能モデルを提唱しています。

29.
Mio Takeuchi, Takao Yamagishi, Yoichi Kamagata, Kenshiro Oshima, Masahira Hattori, Taiki Katayama, Satoshi Hanada, Hideyuki Tamaki, Katsumi Marumo, Hiroto Maeda, Munetomo Nedachi, Wataru Iwasaki, Yuichi Suwa, and Susumu Sakata.
Tepidicaulis marinus gen. nov., sp. nov., a novel marine bacterium reducing nitrate to nitrous oxide strictly under microaerobic conditions.
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 65, 1749-1754. (2015)

  • DOI: 10.1099/ijs.0.000167 / PubMed: 25740933
  • 亜酸化窒素(N2O)はオゾン層破壊や地球温暖化の原因となることから、どのような微生物が亜酸化窒素の生成・消費に関わり、そしてどの程度地球上に存在しているかを解明することが生物地球化学的循環の理解に重要となります。この研究では、これまでほとんど未知であった海洋の好気環境における脱窒反応に着目し、微好気的に亜酸化窒素を生成する新規微生物を分離するとともにそのゲノム解析について報告しています。

28. (Review in Japanese)
福永津嵩,岩崎渉
Computational Ethology:バイオインフォマティクスと動物行動学の融合
領域融合レビュー4,e003.(2015)

  • DOI: 10.7875/leading.author.4.e003
  • ゲノム配列などのオーミクスデータ解析を中心に発展してきたバイオインフォマティクスの新たな関連分野として、いま、動物行動学(Ethology)と情報科学が融合した新たな分野「Computational Ethology」が現れつつあります。バイオイメージインフォマティクスやバイオロギングサイエンスとも関わりの深いこの新しい分野についての総説です。

27.
Tsukasa Fukunaga, Shoko Kubota, Shoji Oda, and Wataru Iwasaki.
GroupTracker: Video tracking system for multiple animals under severe occlusion.
Computational Biology and Chemistry, 57, 39-45. (2015)

  • DOI: 10.1016/j.compbiolchem.2015.02.006 / PubMed: 25736254
  • Supplementary Movies: Supplementary Movies for GroupTracker Paper
  • Accepted for a conference paper presentation at 13th Asia Pacific Bioinformatics Conference (APBC2015).
  • 生物画像・動画データを対象としたバイオインフォマティクス分野は「バイオイメージインフォマティクス」と呼ばれ、複雑な表現型を定量するための決定的なアプローチとして期待が高まっています。この研究では、画像データへの混合ガウス分布のフィッティング手法を工夫することにより、複数の動物個体を撮影した動画から各個体のトラッキングを行うソフトウェアGroupTrackerを開発しました。

26. (Review in Japanese)
岩崎渉,尾崎遼.
NGSデータ解析
実験医学32,3197-3202.(2014)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 実験医学増刊『今日から使える!データベース・ウェブツール 達人になるための実践ガイド100』(内藤雄樹/編)収録(pp. 36-41)。RNA-Seq・ChIP-Seqデータ解析を例に、いわゆる次世代シーケンサデータのバイオインフォマティクス解析の実際やそのために必要な環境について解説した総説です。

25.
Marty Kwok-Shing Wong, Haruka Ozaki, Yutaka Suzuki, Wataru Iwasaki, and Yoshio Takei.
Discovery of osmotic sensitive transcription factors in fish intestine via a transcriptomic approach.
BMC Genomics, 15, 1134. (2014)

  • DOI: 10.1186/1471-2164-15-1134 / PubMed: 25520040
  • 魚類は海水中では自らよりも浸透圧の高い水を飲み、一方で淡水中では自らよりも浸透圧の低い水を飲みますが、そういった両極端な環境にどのようにして適応できているのか、その分子メカニズムの多くはまだ良くわかっていません。この研究では、両環境を行き来できる広塩性魚類であるメダカのトランスクリプトーム解析を行い、その巧みな浸透圧調節メカニズムに関わる遺伝子群を明らかにしました。

24.
Shotaro Hirase*, Haruka Ozaki*, and Wataru Iwasaki.
Parallel selection on gene copy number variations through evolution of three-spined stickleback genomes.
BMC Genomics, 15, 735. (2014)

  • DOI: 10.1186/1471-2164-15-735 / PubMed: 25168270
  • ゲノムの進化を生物の表現型と結びつけていくことはゲノム進化学における重要な目的ですが、そこでは、両者の関連性を強く示唆する「正の選択」を検出することが有効です。一塩基置換レベルでの正の選択を検出してきたこれまでの研究に対して、この研究では、生物集団のゲノム中の「コピー数多型に対する正の選択」を、海水性から淡水性への平行進化を起こした魚類であるイトヨのゲノムデータを用いて検証しました。

23.
Mio Takeuchi, Yoichi Kamagata, Kenshiro Oshima, Satoshi Hanada, Hideyuki Tamaki, Katsumi Marumo, Hiroto Maeda, Munetomo Nedachi, Masahira Hattori, Wataru Iwasaki, and Susumu Sakata.
Methylocaldum marinum sp. nov., a novel thermotolerant methane oxidizing bacterium isolated from marine sediments.
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 64, 3240-3246 (2014)

  • DOI: 10.1099/ijs.0.063503-0 / PubMed: 24981325
  • 温室効果ガスでもあるメタンを環境中のどのような微生物が生成・消費しているかを解明することは、メタンの生物地球化学的循環を理解する上で基盤的な知識を与えます。この研究では、「たぎり」と呼ばれるメタンを排出する熱水噴出孔の存在が知られている鹿児島湾の海底堆積物から好気性メタン酸化細菌を単離し、Methylocaldum属における最初の海洋性細菌として報告しました。

22.
Yohei Kumagai, Susumu Yoshizawa, Kenshiro Oshima, Masahira Hattori, Wataru Iwasaki, and Kazuhiro Kogure.
Complete genome sequence of Winogradskyella sp. strain PG-2, a proteorhodopsin-containing marine flavobacterium.
Genome Announcements, 2, e00490-14. (2014)

  • DOI: 10.1128/genomeA.00490-14 / PubMed: 24874677
  • 近年、微生物による新たな光エネルギーの利用機構としてプロテオロドプシンへの注目が高まっています。この論文では、プロテオロドプシン遺伝子を持つ海洋性フラボバクテリアWinogradskyella sp.の全ゲノム配列解析結果について報告しました。

21. (Commentary)
Sebastian J. Schultheiss, Joshua SungWoo Yang, Wataru Iwasaki, Shu-Hsi Lin, Angela Jean, and Magali Michaut
Crossing borders for science.
PLOS Computational Biology, 10, e1003519. (2014)

  • DOI: 10.1371/journal.pcbi.1003519 / PubMed: 24675824
  • 若手研究者育成における国を超えた交流の重要性について、若手国際会議AYRCOB (Asian Young Researchers Conference on Computational and Omics Biology)を主催した経験などをもとに、ドイツ・韓国・台湾・シンガポール・オランダの仲間と寄稿しました。

20.
Susumu Yoshizawa, Yohei Kumagai, Hana Kim, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Wataru Iwasaki, Edward F. DeLong, and Kazuhiro Kogure.
Functional characterization of flavobacteria rhodopsins reveals a unique class of light-driven chloride pump in bacteria.
Proc Natl Acad Sci U S A, 111, 6732-6737. (2014)

  • DOI: 10.1073/pnas.1403051111 / PubMed: 24706784
  • Introductory Article: Nature’s toolkit for microbial rhodopsin ion pumps, Proc Natl Acad Sci U S A, 111, 6538-6539. (2014)
  • Press Release: AORI of UTokyo (in Japanese)
  • プロテオロドプシンの発見以降、微生物型ロドプシンによる光エネルギーの利用は地球規模で果たす役割も大きく、また、その機能や進化的背景が豊かなことから注目が集まっています。この研究では、海洋細菌Nonlabens marinusの全ゲノム解析によって、塩化物イオンをポンプするという新たな光エネルギー利用形態を司る微生物型ロドプシンを発見しました。

19.
Hikari Yoshitane*, Haruka Ozaki*, Hideki Terajima*, Ngoc-Hien Du, Yutaka Suzuki, Taihei Fujimori, Naoki Kosaka, Shigeki Shimba, Sumio Sugano, Toshihisa Takagi, Wataru Iwasaki (Co-Corresponding Author), and Yoshitaka Fukada.
CLOCK-controlled polyphonic regulations of circadian rhythms through canonical and non-canonical E-boxes.
Molecular and Cellular Biology, 34, 1776-1787. (2014)

  • DOI: 10.1128/MCB.01465-13 / PubMed: 24591654
  • Introductory Article: Articles of Significant Interest Selected from This Issue by the Editors, Molecular and Cellular Biology, 34, 1721. (2014)
  • Press Release: UTokyo (in Japanese) / UTokyo (in English)
  • 転写因子CLOCKは哺乳類の該日時計制御で中心的な機能をはたす転写因子ですが、個別の制御機構の解析に対して、ゲノムレベルでの包括的な解析は十分になされていませんでした。この研究では、RNA-Seq、ChIP-Seq、small RNA-Seqデータを詳細に解明することにより、CLOCKが認識する新規DNAモチーフを複数発見したほか、転写因子やマイクロRNAを介した概日時計の制御メカニズムを解明しました。

18. (Review)
Toshiaki Katayama, Mark D Wilkinson, Kiyoko F Aoki-Kinoshita, Shuichi Kawashima, Yasunori Yamamoto, Atsuko Yamaguchi, Shinobu Okamoto, Shin Kawano, Jin-Dong Kim, Yue Wang, Hongyan Wu, Yoshinobu Kano, Hiromasa Ono, Hidemasa Bono, Simon Kocbek, Jan Aerts, Yukie Akune, Erick Antezana, Kazuharu Arakawa, Bruno Aranda, Joachim Baran, Jerven Bolleman, Raoul JP Bonnal, Pier Luigi Buttigieg, Matthew P Campbell, Yi-an Chen, Hirokazu Chiba, Peter JA Cock, Kevin B Cohen, Alexandru Constantin, Geraint Duck, Michel Dumontier, Takatomo Fujisawa, Toyofumi Fujiwara, Naohisa Goto, Robert Hoehndorf, Yoshinobu Igarashi, Hidetoshi Itaya, Maori Ito, Wataru Iwasaki, Matús Kalas, Takeo Katoda, Taehong Kim, Anna Kokubu, Yusuke Komiyama, Masaaki Kotera, Camille Laibe, Hilmar Lapp, Thomas Lütteke, M Scott Marshall, Takaaki Mori, Hiroshi Mori, Mizuki Morita, Katsuhiko Murakami, Mitsuteru Nakao, Hisashi Narimatsu, Hiroyo Nishide, Yosuke Nishimura, Johan Nystrom-Persson, Soichi Ogishima, Yasunobu Okamura, Shujiro Okuda, Kazuki Oshita, Nicki H Packer, Pjotr Prins, Rene Ranzinger, Philippe Rocca-Serra, Susanna Sansone, Hiromichi Sawaki, Sung-Ho Shin, Andrea Splendiani, Francesco Strozzi, Shu Tadaka, Philip Toukach, Ikuo Uchiyama, Masahito Umezaki, Rutger Vos, Patricia L Whetzel, Issaku Yamada, Chisato Yamasaki, Riu Yamashita, William S York, Christian M Zmasek, Shoko Kawamoto, and Toshihisa Takagi.
BioHackathon series in 2011 and 2012: penetration of ontology and linked data in life science domains.
Journal of Biomedical Semantics, 5, 5. (2014)

  • DOI: 10.1186/2041-1480-5-5 / PubMed: 24495517
  • ライフサイエンス統合データベースセンターが主催するライフサイエンス分野における情報技術者・研究者向けのハッカソン形式の国際会議「BioHackathon」における様々な開発成果を紹介した総説です。

17.
Ching-chia Yang and Wataru Iwasaki.
MetaMetaDB: A database and analytic system for investigating microbial habitability.
PLOS ONE, 9, e87126. (2014)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0087126 / PubMed: 24475242
  • Banner MetaMetaDB Website
  • 近年、世界中の研究者によって様々な環境のメタゲノムデータやアンプリコンシーケンスデータが収集され続けていますが、それらの貴重なデータの再利用は進んでいません。この研究では、それらを収集して再利用しやすくまとめたメタデータベースMetaMetaDBを開発し、微生物の生息環境の推測やメタゲノムデータの環境レベルでの解析に用いることができるように整備しました。

16.
Tsukasa Fukunaga, Haruka Ozaki, Goro Terai, Kiyoshi Asai, Wataru Iwasaki, and Hisanori Kiryu
CapR: revealing structural specificities of RNA-binding protein target recognition using CLIP-seq data.
Genome Biology, 15, R16. (2014)

  • DOI: 10.1186/gb-2014-15-1-r16 / PubMed: 24447569
  • Introductory Article: Shape over sequence in the RBPome, Biome (23 Jan, 2014).
  • Cover Image Selected as the cover of the 2014 RBPome special issue of Genome Biology.
  • RNAの機能には二次構造が重要であり、予測のためのプログラムも数多く開発されています。しかしながらこの問題には、実際にはRNAの二次構造は極めてゆらぎやすく、一つの二次構造で代表することはそもそも難しいという本質的な困難があります。CLIP-Seqデータに対してCapRを用いることで、あるRNA分子が取りうる二次構造全体を正確に評価し、RNA結合タンパク質が認識する二次構造モチーフを発見することができます。

15. (Commentary)
Teresa Szczepinska, Wataru Iwasaki, and Thomas Abeel.
The spirit of competition: To win or not to win.
PLOS Computational Biology, 9, e1003413. (2013)

  • DOI: 10.1371/journal.pcbi.1003413 / PubMed: 24385894
  • 若手研究者の育成におけるコンペティションの有用性について、若手国際会議AYRCOB (Asian Young Researchers Conference on Computational and Omics Biology)主催の経験などをもとに、ポーランド・米国の仲間と寄稿しました。

14.
Seishiro Aoki, Motomi Ito, and Wataru Iwasaki.
From beta- to alpha-proteobacteria: the origin and evolution of rhizobial nodulation genes nodIJ.
Molecular Biology and Evolution, 30, 2494-2508. (2013)

  • DOI: 10.1093/molbev/mst153 / PubMed: 24030554
  • マメ科植物と共生し窒素固定を行う根粒菌は過去から現在までの地球生態系において極めて重要な役割を果たしてきましたが、その進化的起源についてはまだ謎が多く、論争が続いています。この研究では、大規模なゲノム情報を活用することで、根粒菌が持つ遺伝子nodIJの起源がαプロテオバクテリアではなくβプロテオバクテリアにあることを明らかにし、根粒菌の起源に関するこれまでの定説を見直す必要性を指摘しました。

13.
Wataru Iwasaki, Tsukasa Fukunaga, Ryota Isagozawa, Koichiro Yamada, Yasunobu Maeda, Takashi P. Satoh, Tetsuya Sado, Kohji Mabuchi, Hirohiko Takeshima, Masaki Miya, and Mutsumi Nishida.
MitoFish and MitoAnnotator: A mitochondrial genome database of fish with an accurate and automatic annotation pipeline.
Molecular Biology and Evolution, 30, 2531-2540. (2013)

  • DOI: 10.1093/molbev/mst141 / PubMed: 23955518
  • Banner MitoFish and MitoAnnotator Website
  • Cover Image Selected as the cover of the November 2013 issue of Mol Biol Evol.
  • Selected as MBE Citation Classics (representing the top <1% citations) in MBE Citation Classics (2018 Edition), Molecular Biology and Evolution, 35, 1–2. (2018)
  • Selected as a highly-cited paper in Molecular Biology & Genetics (top 1% by citations for field and year in the Web of Science) by Clarivate.
  • ミトコンドリアゲノムデータは動物の進化の歴史を辿る上で非常に有用ですが、アノテーションが難しいことなどから、大規模な比較解析を可能にするためのリソースを整備することが急務でした。この研究では、魚類の進化や生態に興味を持つ研究者にとって広く有用な魚類ミトコンドリアゲノムデータベースMitoFish、および正確かつ高速な自動アノテーションプログラムMitoAnnotatorを開発しました。

12.
Masaki Miya, Matt Friedman, Takashi P. Satoh, Hirohiko Takeshima, Tetsuya Sado, Wataru Iwasaki, Yusuke Yamanoue, Masanori Nakatani, Kohji Mabuchi, Jun G. Inoue, Jan Yde Poulsen, Tsukasa Fukunaga, Yukuto Sato, and Mutsumi Nishida.
Evolutionary origin of the Scombridae (tunas and mackerels): Members of a paleogene adaptive radiation with 14 other pelagic fish families.
PLOS ONE, 8, e73535. (2013)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0073535 / PubMed: 24023883
  • News Featured in Asahi Shimbun newspaper (Nov 4, 2013).
  • 魚類のミトコンドリアゲノムデータの詳細な分子系統解析によって、既存の形態の類似性に基づいた分類体系と異なり、マグロ・カツオ・サバなどを含む15科が深海に生息していたと推測される新たな分類群を作ることを明らかにするとともに、これをペラジア(「外洋に住むもの」を意味するギリシャ語)と命名しました。

11. (Review in Japanese)
尾崎遼,岩崎渉
ENCODEプロジェクトで明らかになったこと
細胞工学32,101-106.(2013)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 細胞工学2013年1月号収録。それ自体は塩基配列の並びにすぎないゲノム配列に対し、そこに記された機能エレメントを全て明らかにすることを目指した米国の大規模研究プロジェクト「ENCODE」から発表された多くの論文群を紹介するとともに、注目すべき成果を解説した総説です。

10.
Thanet Praneenararat*, Toshihisa Takagi, and Wataru Iwasaki*.
Integration of interactive, multi-scale network navigation approach with Cytoscape for functional genomics in the big data era.
BMC Genomics, 13(Suppl 7), S24. (2012)

  • DOI: 10.1186/1471-2164-13-S7-S24 / PubMed: 23281970
  • Banner NaviClusterCS Website
  • Accepted for a conference paper presentation at 11th International Conference on Bioinformatics (InCOB2012).
  • 超高速グラフクラスタリングアルゴリズムによるネットワーク可視化ソフトウェアNaviClusterを、バイオインフォマティクス分野におけるネットワーク可視化・解析プラットフォームとしてデファクトスタンダートであるCytoscapeのプラグインに移植しました。

9. (Review in Japanese)
佐藤行人,八谷剛史,岩崎渉
水圏生物学における次世代シーケンサー活用の現状と応用可能性への展望
水産育種, 41,17-32.(2012)

  • (English abstract available)
  • Yukuto Sato, Tsuyoshi Hachiya, and Wataru Iwasaki.
  • Next-generation sequencing in aquatic biology: Current status and future directions.
  • Fish Genetics and Breeding Science, 41, 17-32. (2012)
  • 水圏生物学分野における次世代シーケンサー活用とその展望について、トランスクリプトーム解析、集団遺伝学解析、メタゲノム解析など幅広いアプリケーションにわたって解説した総説です。

8. (Review in Japanese)
岩崎渉,山本泰智,高木利久.
文献管理・文献推薦
実験医学29,2556-2562.(2011)

  • Publisher / Amazon.co.jp
  • 実験医学増刊『使えるデータベース・ウェブツール 日本発のデータベース戦略から,ゲノム・疾患情報の有効活用まで』(有田正規/編)収録(pp. 222-228)。研究の最初と最後の段階、すなわち、研究立案と論文執筆の両者において共に鍵を握るのが文献調査の量と質です。この総説では、医学生物学分野においてこれらのプロセスをコンピュータの活用によって効率化することを目指した文献管理・文献推薦の情報技術について解説しました。

7.
Thanet Praneenararat*, Toshihisa Takagi, and Wataru Iwasaki*.
Interactive, multi-scale navigation of large and complicated biological networks.
Bioinformatics, 27, 1121-1127. (2011)

  • DOI: 10.1093/bioinformatics/btr083 / PubMed: 21349867
  • Banner NaviCluster Website
  • 生命科学分野において多くのデータはネットワークとして表現されますが、オーミクスデータなど巨大なネットワークの可視化を行うことは極めて困難です(毛玉のように見えることから"hairball問題"と呼ばれます)。この研究では、超高速グラフクラスタリングアルゴリズムによって、Google Mapsのように動的に粒度を調整しながらネットワーク可視化を行うソフトウェアNaviClusterを開発しました。

6.
Michiaki Hamada, Hisanori Kiryu, Wataru Iwasaki, and Kiyoshi Asai.
Generalized centroid estimators in bioinformatics.
PLOS ONE, 6, e16450. (2011)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0016450 / PubMed: 21365017
  • バイオインフォマティクス分野における多くの問題を俯瞰すると、しばしば、個々の推定値が実現する確率が極めて小さいような高次元空間における点推定問題として定式化されることがわかります。この研究では、そういった典型的な問題において強力かつ理論的基礎を持った推定を可能にする枠組みとして、一般化セントロイド推定関数を導入しました。

5.
Wataru Iwasaki*, Yasunori Yamamoto*, and Toshihisa Takagi.
TogoDoc Server/Client System: Smart recommendation and efficient management of life science literature.
PLOS ONE, 5, e15305. (2010)

  • DOI: 10.1371/journal.pone.0015305 / PubMed: 21179453
  • Banner TogoDoc Client Website
  • Banner TogoDocMobile@AppStore
  • 生命科学が分野横断的科学になり続ける時代において、文献調査のプロセスを効率化することは、生命科学分野の研究全体を加速していく観点からも極めて重要な課題と言えます。この研究では、研究者のPCに保存された文献PDFファイルをもとに文献調査を効率化する統合ソリューションTogoDocを開発しました。

4.
Wataru Iwasaki and Toshihisa Takagi.
An intuitive, informative, and most balanced representation of phylogenetic topologies.
Systematic Biology, 59, 584-593. (2010)

  • DOI: 10.1093/sysbio/syq044 / PubMed: 20817714
  • Banner Wheel Tree Website
  • Recommended at Faculty of 1000.
  • 生命進化を記述する上で、一般的な2分岐系統樹では表現できない進化的な関係性をどのように表現するかは、しばしば見過ごされますが「一回性の現象である生命進化をどう捉えるか」にも直接関わる本質的な問題の一つです。この研究では、曖昧性をもって推定された進化的な関係性の情報表現手法である「車輪樹法」を開発しました。

3.
Wataru Iwasaki and Toshihisa Takagi.
Rapid pathway evolution facilitated by horizontal gene transfers across prokaryotic lineages.
PLOS Genetics, 5, e1000402. (2009)

  • DOI: 10.1371/journal.pgen.1000402 / PubMed: 19266023
  • Recommended at Faculty of 1000
  • 「多くの遺伝子が揃って初めて機能するような複雑な生命システムがどのように進化し得たのか」は、生命進化における古典的かつ本質的な謎の一つです。この研究では、大規模比較ゲノム解析によって、原核生物において遺伝子水平伝播がそういった複雑な生命システムの進化に重要な役割を果たしたという仮説を提示しています。

2.
Wataru Iwasaki and Toshihisa Takagi.
Reconstruction of highly heterogeneous gene-content evolution across the three domains of life.
Bioinformatics, 23, i230-i239. (2007)

  • DOI: 10.1093/bioinformatics/btm165 / PubMed: 17646301
  • Accepted for a conference paper presentation at 15th Annual International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology / 6th European Conference on Computational Biology (ISMB/ECCB2007). Acceptance rate = 15.8%.
  • ゲノム進化は遺伝子の獲得・欠失の過程としてモデル化することができますが、その過程はDNA配列の進化よりもはるかに大きな系統間での不均一性を示します。この研究では、進化速度の不均一性を考慮したゲノム進化モデルと、期待値最大化法に基づいたパラメータの効率的な推定アルゴリズムを開発しました。

1.
Wataru Iwasaki, Shun-ichi Sekine, Chizu Kuroishi, Seiki Kuramitsu, Mikako Shirouzu, and Shigeyuki Yokoyama.
Structural basis of the water-assisted asparagine recognition by asparaginyl-tRNA synthetase.
Journal of Molecular Biology, 360, 329-342. (2006)

  • DOI: 10.1016/j.jmb.2006.04.068 / PubMed: 16753178
  • 遺伝情報を正しく翻訳するには、アミノ酸と対応するtRNAとを誤りなく結合させることが不可欠です。この研究では、アスパラギニルtRNA合成酵素がアスパラギンおよびtRNA(Asn)を認識する分子メカニズム、特に、アスパラギンとアスパラギン酸とを正確に区別するために水分子を巧みに利用していることを構造生物学・生化学的手法によって明らかにしました。